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予鈴が鳴る20分前に席に着き、小テストに備えノートを取り出す。表面に書かれた自分の名前がふと目に入り、嫌気がさした。
鳩見 鷹也。
僕はこの名前が大嫌いだ。名字に“鳩”がついているのに、名前に違う鳥を入れるなんて、それだけで親がマヌケであることを証明しているようなものだからだ。名付けたのはもちろん母だろう。
物心ついた頃から、僕の家には父親がいない。
母が運動会にお弁当を作り忘れるたび。ワッペンを縫い付けるのを忘れるたび。工作用に集めたペットボトルを間違えて捨てるたび。
僕にも父親がいればよかったと、心底思う。
『母さんがそんなだから、父さんも出て行ったんだ!』
かつて誕生日にケーキを買い忘れた母に、僕が放った言葉だ。母はただ眉を八の字にして、頭をかきながら笑った。『そうだよねぇ、ごめんねぇ』と。薄っぺらなこの人には、何も響かせることができない。そう悟り、僕は絶望した。それから母にいかなる期待を寄せることもなくなった。
母のような人間になってたまるものか。その一心で努力を重ねた。学校のテストでも、中学から始めた走り高跳びでも、優秀な成績を収めた。
その度に「鷹也はお母さんの自慢の息子だ」と鼻穴を膨らませる母を醜悪だと感じた。僕の功績は僕自身の努力によるものだ。手柄を横取りするな、とさえ思った。
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