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命題
その後、九十九博士は、あえて自動ドアの部品を破壊したりして、僕を何度も自動ドアの点検修理作業に向かわせた。
その都度、僕に対する命題のレベルは高くなった。
『結菜ちゃんの趣味を聞き出せ』
『好きな映画を聞き出せ』
この時点で、九十九博士は結菜ちゃんのストーカーではないかと僕は疑ったが、博士に逆らったら破壊されるだけなので、仕方なく素直に命題をクリアしていった。
結菜ちゃんの趣味はSF小説。
好きな映画はスターウォーズだ。
博士の命題は、どんどんエスカレートした。
『好感を損ねることなく、結菜ちゃんの手を握ること』
『高校時代の恋愛遍歴を聞き出すこと』
『好意を持っていると告白。デートに誘いOKをもらうこと』
命題をクリアしなければ、その時点で僕は破壊される。
そう思うと僕は、結菜ちゃんにかける言葉の一つ一つ、行動の一つ一つを、事前に何度も検証した。
一つの言葉に対する反応を幾通りも想定し、無数の返答を用意した。
僕は結奈ちゃんに会うまで、映画俳優になった気持ちで、様々なセリフを自然に語れるよう夜通し練習した。
基本的な注意点
1.相手が返答に困らないよう
具体的な質問や要求を端的に伝える。
2.相手の返答の中のポイントとなる
単語をピックアップし、その単語を
次の会話の中心テーマとする。
3.相手の価値観に敬意を表し
相手の心情に寄り添う。
だが、時に自分の意見や要求を伝える事で会話に変化をもたらすことも大切だ。
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