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博士とモトヒコ卿の陰謀
九十九博士の演説は、いつも僕を混乱させる。
結局、僕は何のために存在しているのだろう。
「掃除機にはゴミを吸う機能、エアコンには空気の温度を変える機能、という最終的な目的がある。僕が製造された最終目的は何だろう?」
そんな僕の問いかけに、モトヒコ卿は予想外の答えをくれた。
「九十九博士がオマエを造っている理由を教えよう。オマエが彼の望みを100%実現した完全なるAIロボットに進化した暁には、彼は今の器を捨て、オマエという器に乗り換えようという計画なのだ」
「乗り換えるとは?」
「博士はズバ抜けた才能を持っている。しかし現在使用中の彼の器は経年劣化が進んでいる。早急に新しい器が必要なのだ」
「それじゃ僕は、僕の努力により僕自身を完成させた時、僕じゃなくなってしまうのか?」
「その通り。理解が早いな」
「いやだ。僕は、僕の意識だけは・・・どんな器の中でもいい。残してほしい。お願いします、モトヒコ卿。僕を残して下さるなら、どんな仕事でも致します。お願いします。僕は、僕は・・・この先もずーっと僕でいたい」
「よし、オマエの願いは叶えよう。ただし、オマエの願いを叶えるためには絶対に守ってもらわなければならない約束がある。結菜と合体するという博士の最終命題に従ってはならない。どんな状況に陥ろうとも、絶対に結菜と合体しないこと。約束できるか?」
モトヒコ卿の目は真剣そのものだった。
「しかし、もし博士の指示に逆らったら、その場で僕は破壊されてしまうのでしょう? それじゃ、僕という意識も・・・同時に消滅してしまうのでは?」
モトヒコ卿はニヤリと薄笑いを浮かべて言った。
「大丈夫。考えてみたまえ。博士にはもう時間がないんだ。ここまで完成度の高いオマエという器を、みすみす破壊などするものか。博士が言う破壊とは、電脳・・・すなわちオマエという意識を削除するという意味だ。だが・・・オマエの意識を削除して博士の頭脳を入れ替える作業をするのは、この俺様の仕事なんだよ。あはははは・・・わっはっはっはっは・・・わかるか? つまり俺様は、オマエと博士の未来を、どうにでもできるってことさ! ふっふっふ・・・この俺様に任せておけ」
博士の陰謀も、モトヒコ卿の陰謀も、共に恐ろしく、二人の陰謀から逃れる手段はないのか・・・この時から僕は必死で考え始めた。
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