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「この子が?」
朝霧忍と早瀬透子の目の前には、ベッドの上に座る小さな女の子がいた。
七歳になったばかりの可愛らしい少女だったが、意志を持たない人形のような表情をしている。
「かわいそうに。怪者のせいね」
透子がそう呟く。
「あの、本当に、この子を治してもらえるんですか? もう、病院の先生に診てもらっても、一向によくならなくて」
少女の母親は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らした。その悲痛な叫びは子ども部屋に響いていく。
「大丈夫です。必ず、僕たちがこの子を治してみせます」
忍は力強く言葉を返した。
高校生の彼は、少し年上である透子にアイコンタクトをして小さく頷く。
「じゃあいこう」
忍がそう声をかけると、「OK、いつでもいいわ」と透子が返事をする。
忍はベッドの縁に腰をかける少女に視線を合わせるように膝を曲げて姿勢を低くした。
少女の目は虚で、忍のことを認識しているかさえも不明瞭だ。
大丈夫。そう心の中で声をかけた忍は、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめる。
次の瞬間、彼の意識は少女の中へと入っていく。忍は彼女のセカイへとセンニュウした。
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