クロのクリスマス

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 容疑者である男の自宅から、被害者の血の付いた包丁などが押収されたと報道された。  男は黙秘を貫いているらしいが、今後の取り調べで詳しい状況が判明するだろう。  ニュースを聞いていた夜月の頭の中に桜蘭の家の浴室が浮かんだ。  風呂に湯を張っているところに男が来て口論になりそのまま彼女を溺死させる――その時にお湯でマスカラが落ちてしまった。 「正気の沙汰じゃない」  連行されていく男の姿がテレビに映ると、夜月は小さく呟いた。  男が何故、楼蘭の遺体を切りつけたのかに気付いたようだ。  楼蘭を溺死させ気が動転した男は、彼女が本当に死んでしまったかを確かめるために包丁で刺した。  わざわざアウトレットモールのクリスマスツリーに彼女を吊るしたのは、綺麗に飾り付けるため。  ――正気の沙汰じゃない。  夜月が呟いた言葉と推測が証明されるのは、男の自白が始まってからだ。  彼が桜蘭を一方的な想いで拘束し続けことが判明した。  アルバイトでクリスマスを一緒に過ごせないと断られ、激高して我を失った――結果、死なせてしまったと警察に話していたという。 END...
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