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――交際相手の男を逮捕。痴情のもつれか。
そんな見出しで記事は始まっていた。
犯人が黙秘をしているため詳しい動機はわかっていないらしい。
「実際の事件でもサスペンスドラマみたいな動機があるのかなって」
朝日は推理小説だけでなく、サスペンスドラマも好きでよく見ていた。
夜月もそれはよく知っている。
「フィクションより、現実のほうがおぞましいと思うよ」
タブレット端末をテーブルに置く。
「交際相手って報道されているけど、実際は違ったんだと思う」
「友達だったってこと?」
「というより、片思いかな」
夜月は犯人が楼蘭に想いを寄せていたと推測した。
「付き合っていたというより、付きまとっていたんじゃないかと思う」
「ストーカーっとこと?」
「そんな感じ。付きまとわれ続けて、怖くなって『付き合ってる』ことにしたのかも」
元々、ストーカーじみた付きまとい行為をしていた相手に楼蘭が折れたんじゃないかと考えた夜月。
「それなら、目を付けられた時点で詰んでるね。可哀想」
朝日は抑揚の無い声でぼそりと呟く。
「付き合ってたつもりの男が、拒絶の言葉にキレたんだと思うよ」
「ふぅん。じゃあ、シロはそろそろ部屋に戻ろうかな」
夜月との話で満足したのか、朝日はタブレットをもってリビングを出ていった。
彼女の後ろ姿を見送ってから、テレビを付けると事件のニュースが映る。
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