クロのクリスマス

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クロのクリスマス

 12月24日――クリスマス・イブ。  数十年に一度と言われる大寒波の影響で、日本中で稀な積雪量を記録している。  ホワイト・クリスマスというより、ヘビースノー・クリスマスになりそうだ。  関東地方太平洋側に位置する茨城県――その南部にある土浦市も、寒波の影響を受けていた。  滋賀県の琵琶湖についで日本第二位の広さを誇る湖・霞ヶ浦にも氷が張り、その寒さを物語っている。  土浦の市街地から車で15分ほど――電車なら、常磐線で土浦駅から上り方面の一駅先にある荒川沖駅からほど近いところに、狸穴(まみあな)(まさる)の探偵事務所はある。  元茨城県警の刑事だった彼は、とある事件をきっかけに警察を辞めた。  荒川沖駅近くの雑居ビル内に探偵事務所を開業し、今は刑事だった頃のスキルを活かし素行調査などの探偵業務を行っている。  小さな事務所のため他の社員はおらず、アルバイトの助手兼事務員が一人いるだけだ。  時刻は午前9時になろうとしている。  近所の喫茶店でコーヒーを飲みながら新聞を広げていた狸穴。  寛ぎながら過ごしていたが、スマートフォンの着信音で新聞をめくる手を止めた。  ――猫実(ねこざね)夜月(よつき)。  表示された名前を見て、狸穴は通話ボタンをタップする。  電話の相手は近所に住む男子高校生で、狸穴の探偵事務所のアルバイトだ。 「もしもし、朝っぱらからどうしたんだ?」  普段、この時間に夜月から電話がかかってくることがないことから、緊急の用だと狸穴は思った。  挨拶も忘れ、率直に要件を聞く。 『おはようございます、狸穴さん。実はちょっと厄介なことになって……迎えに来てもらうことってできますか?』  声色は普段通りだが、はっきりと答えない夜月。 「それは構わないが、どうした?」  遠回しな物言いをしない夜月にしては歯切れの悪い答えに、狸穴が聞き返す。
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