第四章 出会った頃

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互いにシャワーを浴びてから也夜のベッドで再び絡み合う。 ずっと今までモデルと美容師、客と店員の関係だったのに気づけば裸同士になっている。 「抵抗もせず受け入れてくれるなんて嬉しい」 「抵抗だなんて……也夜が僕と同じだなんて思わなかったよ。だからこうして君と体を合わ?わせているんだよ」 也夜はその言葉を聞いてニヤッと笑った。 「……來っ」 「あっ……」 大輝以外の男の体は知らない來。しかし自然と身体は也夜に密着していく。 「ああ、こうしたかったよ……來……」 來も何かを発したかったがその発したい口は也夜の唇で塞がれる。 2人は自然と形がはまり、愛し合っていく。來は興奮と錯乱の中で思い出す。 也夜の視線、あれは気のせいかと思っていたが今思えば自分を見ていたのだと。 強く握られる手と手。 汗ばむ身体。 2人はほぼ同時に果てた。 その後も互いを求め合う。それまで全くこうなるとは予測もしていなかったのだろう。 だが一気に火がついたら止まらなかった。 來は久しぶりに、でも大輝とは違った愛し方を知って笑みが溢れる。 「どうしたんだい? 笑って」 「ううん、なんでもない」 「なんでもないわけでもないだろ?」 「なんでもないって」 2人は鼻と鼻をくっつけて笑い合う。手も何度も組み合って見つめ合ってまた笑って。 來はすごく幸せを感じた。 大輝も來を愛してくれたがそれ以上の愛を感じた。 「ねえ、來」 「なに? 也夜……」 也夜は少し照れた顔をしてしばらく言葉を発しない。來は首を傾げる。 「……僕とお付き合いしてください」 「このタイミング?」 「ダメ?」 「えー」 参った、と也夜は顔に手を当てる。來は以前大輝と付き合った時は互いが同性愛者と言うことを知ってから付き合い、一ヶ月ほど付き合ってからセックスをしたのを覚えている。18歳の誕生日を過ぎてからだった。 「ねぇ、セックスしてから付き合うのって……身体の相性見てからだったの?」 來は不安になりそう聞いてみた。 「違うよ」 也夜は即答した。來の頭を撫でる。 「今までもそんなのだったの?」 「……んー、その」 口を濁らす也夜。 「正式にお付き合いするのは、來が初めて」 「嘘……」 「本当だよ。嘘なんて言わない……」 「でもキスとかセックスの仕方とか慣れてる感があったし」 たしかに先ほどまでのキスやセックスの仕方から、しかも同性との行為の手解きも経験がないと難しいものである。 「んー、経験はあってね」 「身体だけの関係?」 也夜は少し困った顔をしている。こんな戸惑う彼は見たことはなかった來。 「まぁ、そういうものさ……今まで告白もしたことなかったし。どうお付き合いを始めればいいかわからなくてこんな始まりで……」 「……わかった」 來は身体を起こした。也夜も。 「こんな始まりも、あってもいいよね。僕もお付き合いお願いします」 そう頭を來は下げた。也夜も 「……お願いします」 と改めて言い、頭を下げたが頭を上げると2人して見つめあって笑い合った。 こうして2人は付き合いはじめた。也夜の仕事が忙しくなり次の美容院に来た時には少し髪の毛が伸びてカラーとカットを來が施した。またもや個室で2人きりだったが常にメールや電話をしていて久しぶりな感じはしない。その延長で話している。 大輝が帰りの清算の時にこっそり 「付き合ってるのか」 と聞かれて、振った本人にそう聞かれるのもあまりにも変だが元カレである大輝に対して來は苦笑いでウン、と答えると 「幸せにな」 と返ってきた。大輝はそれを望んでいた。あまりにも自分に依存しすぎる來。仕事にまでも影響して彼の成長を止めたくないと別れを決意した大輝は同じ同性愛者の也夜を紹介したのだ。 「どうしたの?」 也夜にそう言われて大輝と來は 「なんでも」 と、つい同時に声が出てしまった。その場で3人は笑った。 その夜久しぶりに也夜と落ち合って來の部屋に行ったときに玄関で也夜がキスをしてきた。 久しぶり、2回目のキス。本当に自分が初めてなのだろうか、女性との経験を経てからなのだろうか、身体だけの関係とはどんな人とだったのだろうか。來は会えない間メールや電話で聞こうと思えば聞けたのだが聞けなかった。 モヤモヤしていたがキスは本当に気持ちいい。下の方がとてもモゾモゾしてまた前みたいにお尻を触られたら下着を汚してしまいそうだと自分の体をコントロールさせながらも也夜を抱きしめる。 すると 「大輝さんと一緒にいるとなんとなく嫉妬してしまうよ」 也夜は少し悲しげな顔だった。あの時はそんな顔を見せなかったのに。 「2人同時に言葉出た時に、ああ……2人付き合ってたんだなぁって」 「……そう思ったの」 「こないだのセックスの時も大輝さんとの経験もあったからあんなに色っぽかったのかと」 色っぽい、自分がそう思われていたことに來は少し笑ってしまった。 「初めて言われたよ、色っぽいって」 「……ほ、本当だよ。可愛かった」 「可愛い……」 「だからすごく僕も興奮した」 意外な告白であった。そんなつもりはなかった。だがそう見えていたと思うと恥ずかしくなる來。 「僕も……也夜がすごくかっこよくて、ドキドキしていた。ずっと」 「……」 也夜は照れた。そんなところに來は也夜のいつものクールさとのギャップにさらにドキドキする。 「早くシャワー浴びよ」 「うん」 2人手を繋いで部屋に入った。
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