第五章 救世主

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大輝とめずらしく來の部屋でご飯を食べた。來が料理を振る舞うと大輝は驚いた。 「すっご、來はやっぱり器用だな。やらないだけであって」 「最後の一言はいらないよ」 「ははは、そうだな。相当李仁さんに仕込まれたか」 「はい……」 李仁の名前が出ると少しヒヤリとする。李仁と大輝も以前付き合ってたからだ。だがそんなセクシャリティなことを話していても一定距離を保つ大輝。元恋人同士であったのだがもう線引きされている感じであった。 一緒に來作ったスパゲティを食べる。カルボナーラ。 「めっちゃおいしー。先週食べたレンチンより全然いいわ」 「先週食べたばかりだった?」 「うん、でも全然いい。好きだから」 「……だよね、知ってて作りました」 「ふふふ」 大輝は笑いながら最後の最後まで味わう。來はどうして今日来たのかわからなかった。 「……來、お前あまりネット見ないからいうけどさ。リカちゃんとのこと噂になってる」 「……」 「リカちゃん、芸能の仕事でとか言ってたけど事務所の方が仕事いれて美容師の仕事を辞めさせて単独で売り出そうとしてるらしい」 來はそんな話を知らなかった。つい最近まで毎日のようにセックスして……と思い出しながらもセックス以外ロクに話をしていなかったことを思い出す。 「こないだ来ていた新規客もリカのファンだろ、個人のブログに『リカの男のところで髪切ってきた』って書いてあってさ……也夜ファンがそれ見つけて拡散して炎上してる」 來はあまり見ないSNS画面を見てどう見ればいいか分からないが多くの人が自分のことを批判しているのはわかった。カヨやスタッフ達があまりいい顔をしていないと思ったのはそういうことだったのかと。 「……也夜を捨てて女に逃げたかって。馬鹿か、その前に他の男いたっつうのって……そんな冗談はさておき」 「……」 スマホを開いた。リカから連絡はしばらくない。 「リカちゃんはもう店には来ない。お前とも連絡取らないようにしてるし、明後日の清流ガールズNeoの仕事もなし。あっちの事務所もついてる。また美容師が内のアイドルを喰ったってな」 「すいません」 「謝ることか? どうせこの部屋に連れ込んでセックスしたんだろ。仕事中もリカちゃん、お前のこと見てた……あの目は違ったなぁ。あぁ、お前も結構モテる……俺もわかってた。お前の魅力に。李仁さんだって言ってた……こんなに色っぽい男なぜ也夜みたいに表に出ないんだろうなぁって。表に出たら売れっ子になるんだろうなぁって」 色っぽいだなんて言われたこともなかった來。そう思われていたのか、皿を下げて台所に持っていき皿を洗っていると後ろから大輝に抱きつかれた。さっきまで距離を置いていたのだが。 「大輝さん……」 「女を抱いてからなのかなんかますます色っぽくなったなぁ……」 ベルトを外されズボンを下ろされ何も準備をしていない來は焦った。だが大輝はスイッチが入っていた。 「しばらくは抑えていた。お前がダメになるだけじゃない……俺もダメになる……でももうダメだ」 「あぁああああっ!!!」 久しぶりのあっち側の快楽に來は大きく叫んだ。 ベッドにだらけて仰向けになっている來。久しぶりの大輝との行為であった。自分にはこっちの快楽の方が好きだ、と何度も大輝に求めた。 「このベッドにもう3人も也夜以外の人とセックスしたんか。もし也夜が明日目を覚まして帰ってきてもこの上で也夜と寝られるのか?」 「……そんなことなんてない。もう也夜のことは忘れたい」 「忘れたい……かぁ。悲しいこと言うなぁ」 大輝はベッドから体を起こした。 「そうそう、残った有休消化して。明日から」 「はい?」 いきなりの大輝からの提案に來も体を起こす。也夜が事故してからしばらく休んでいた間も有休は消化したはずであった。 「……なんで? いきなり明日からって」 大輝は重い表情である。 「もう新しい店の件、休みの間に決めてくれ。すまん」 「大輝さんっ……なんで?」 「手を出した相手が悪かった。下手したらウチの店もなくなる所だった……來を切り離すことで手はついた」 「切り離すって何? ねぇ、なんで今日はここに? なんでセックスしたの?」 來が大輝の腕を掴むが振り解いた。 「ごめん、守りきれなかった。あとは……例の君に投資してくれる人とアポイントとって自分の店を開いてくれ。開けるかどうかわからないが……できる限りのことはする」 と大輝は財布から名刺を出してベッドの上に置いた。 「それにセックスしたのは……むしゃくしゃしたから」 「……大輝さん」 大輝の目から涙が流れていた。部屋から出てシャワーを浴びているのであろう。そしてそれから出ていき、來は1人裸のままベッドにうずくまって泣いた。
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