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優しい王様がいる世界
「神様!ぼくを、神様にしてください!」
「ちょっと待てや」
突然人の祠に押しかけてきて何を言い出すのかこいつは。
俺はずるっとずっこけそうになった。
やってきた少年は、艶やかな金色の髪に青い目の、とても可愛らしい顔立ちをしていた。年は十歳に届くかどうかといったところだろう。着ているものも綺麗だし、そこそこ良い家のおぼっちゃんに違いない。麓の町の大きな屋敷の息子だろうか。神頼みするほど何かに不自由しているとは思えないのだが。
「山にある、俺の祠の場所を知ってたのはいいよ。大人に聴いたんだろうし」
祠の神様である俺は呆れ果てながら、少年に向き合った。
「でも、祠には結界は貼ってあって、特別な札持った神主しか通れないはずだぜ?それに、何で俺が普通に見えてて会話もできてんのお前」
「札は、神主さんを拝み倒したら貸してくれました!」
「神主おい」
「でもって、何が何でも神様に逢ってやるぞという強い気持ちで山に登ってきたら、神様の姿も見えるようになりました!筋骨隆々のマッチョで、とってもかっこいいですね!」
「ありがと……いやそれどういう理屈よ?」
いや、褒められるのは嬉しいが何やら解せない。そもそも神聖なお札を何故こんな子供に貸したんだ神主、というところからツッコミたい。
確かに、強い意思を持っている者は自分の姿が見えることもあると知っている。でも、札を強引に借りた少年がたまたま俺の姿が見える人間だったなんて、どうにも出来過ぎた話だと思うのだが。
「とりあえず落ち着こうか、少年」
俺は、少年を自分の前に正座させた。自分もあぐらを書いて彼の前に座る。祠の中は特に綺麗な床でもなんでもない普通の土の地面だったが、少年は綺麗な服が汚れることもいとわずびしっと正座してみせた。
「神様になりたいって、なんでやねん。理由を聞かせろ」
「えっと」
俺の問いに、彼は少しだけ迷って言ったのだった。
「神様になって、叶えたい願いがあるからです!神様は、どんなお願いも叶えられるって聞いたから!」
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