特別な一日

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 2022年12月16日――  今日、門倉大地は出所した。  実の父親を殺害し、身柄を拘束された大地は、約10年という月日を刑務所の中で過ごしていた。  目の前で母親が毎日殴られているのを目の当たりにし、何もできない自分の不甲斐なさに押しつぶされそうになっていた。  もう全てを終わりにしたかった――母さんを守りたかった。  でも、それは自分の中の綺麗に塗り替えられた言い訳で、本当はそうじゃない。大地はただ、この悪夢な日常から逃げ出したかっただけだった。 ――パタン――  重たい扉を開き外に出ると、後ろ手に開いた扉をゆっくりと閉める。  久々に塀の外の空気を吸い込んで、コホコホと咳が出たかと思えば、雲ひとつない空に浮かんでいる太陽の光に照りつけられて、眩しさに右腕を挙げて目を覆う。  外の世界は、こんなにも広くて目の前には一本の真っ直ぐな道が続いていた。  振り返ることはせず、前を向いて歩き出す――。
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