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急に何を言い出すのか。
「は? いきなりなんだよ。好きなだけ説教ばっか垂れやがって。親友じゃなかったのかよ? 別れるも何もたった今、逢ったばかりじゃん」
何だ?僕はなんでイラついてるんだろ?
「まあまあまあ。そう怒んなってえ。親友なのにい」
「とにかくさあ。生きてみなよお。せっかくだからさあ、楽しめることは楽しんでさあ。時間、もったいないしねえ。苦労したからこそ見えた景色のおかげで、そのぶん、他の人間にも優しくしてやれんじゃないのかなあ」
「だから、説教たれんなって…… でも、ありがとな。だいぶ気が楽になったよ」
宇宙人が微笑んだ…… ような気がする。
「キミは生きろよ」
もう一度、風景を目に焼き付けるように見下ろした。
「ああ。これでまた星に帰れなくなったなあ」
そう聞こえた気がした。そしてそのまま宇宙人は消えた。
「別れの挨拶は? 宇宙船は? 見送りもなし?」
一緒に立ち上がれずに座ったままだった僕は一人取り残された。
隣にぽっかりと空いたスペースを見つめる。すると何か光るものが落ちている。
「何だよ、これ?」
拾い上げて見ると、
『超小型起爆装置(地球用)』
と書かれていた。
もしかして、わざと忘れて行ったのか……
っていうか、だからなんで日本語書けんだよ。
さてさてさて。暗くなる前に山をおりて家に帰ろうか。
【了】
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