華やかな夜と現実

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華やかな夜と現実

「メリークリスマス!」  ご馳走が並べられたテーブルを囲み、家族が笑顔を交わし合う。両親が兄弟各々にプレゼントを渡し、それを受け取った子供の笑みがこの特別な夜を彩る。  大学受験を控えた高3の兄には、ブランドのボールペン。本が好きな僕には、革製のシックなブックカバーが贈られた。  まるでドラマや映画の中で見る理想の家族の形が今、僕の目の前に広がっている。 「父さん、母さん、ありがとう。僕ちょっと疲れたから、部屋に行って早めに休むよ」  食事をある程度胃に収め、僕はなるべく角が立たない物言いで席を立った。  華やかだった空気が一瞬止まってしまった気がしたが、構わず僕はリビングを後にした。  自室に戻り、ベッドに身体を放り出す。仰向けになって大きく深呼吸をすれば、ようやく体内に酸素が行き渡る。  あの場で僕は、ひとりだった。幸せな家族を俯瞰で見て、言葉にし得ない感情に陥る毎日。  僕は、あの場の誰とも似ていないのだ。僕の家族はそれなりに顔が整っている。それに比べ、明らかに小さな背丈、明らかに細い目、鼻も口も骨格も髪質も、誰がどう見ても他人と言えるほどに僕と家族は似ていない。  きっと僕は本当の子供ではない。物心がついてから、ずっとそう思っている。だから、壁を作らずにはいられない。  クリスマスのような華やかな夜は、余計に孤独を感じてしまう。
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