父 三上 勉

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「その借金、僕が全額返します。その代わり、子供を預かってはくれませんか」 「は? いや、そんな金があるのなら、そういう人を雇うなりすれば……」  突然のことに俺は、これはドッキリか何かだろうか。だとするならば、借金を背負った時点からのドッキリであってほしいなどと馬鹿げた思考に陥る始末。 「それじゃ、駄目なんです。暫くの間、一日中預かってくれる場所なんてどこにも無い。業者なんかも、時間が終われば帰ってしまう。そうじゃなくて、僕は一年ないし二年、妻との約束を果たせるまで、信頼できる人に預けたいんです。考えてみてくれませんか。先払いしますし、あなたが落ち着くまでの生活費も、暫くの間払いますから」  この話が現実になるならば、こんなに良い話はない。子供を1~2年預かれば一千万の借金がチャラになるのだ。更に安定するまでの生活費まで。  現実になるならば、の話だが。  俺は、一度帰って妻に相談させてくれと言い、連絡先を交換して公園を後にした。  妻に話すと、信用できるのであれば、あとの判断は俺に任せると言われた。俺の失錯で共に借金を背負わせてしまったというのに、妻はどこまでも俺を信じてくれている。  俺はというと、未だに考えあぐねていた。良い話には必ず落とし穴があるものだ。慎重にならざるを得ない。  数日後、俺は、彼に電話をかけた。もしかすると出ないかもしれないとも思ったが、彼は俺からの連絡を待っていたようだ。
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