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それからというもの、僕たちは週に2~3回のペースで放課後を共にするようになった。
「ええ! まじで? その後、どうなるの?」
「笹谷さんは、どうなると思う?」
「うーん。そうだな、主人公は彼女に別れも告げずに消えて、帰ってきたら百年後。失意の中彼女の孫と出会い、恋に堕ちる!」
「ちょっ。すごいね、転生とかタイムリープ的な? いや、それも面白いけど、世界観が……」
「はー? 聞いておいて何その反応! で? 結局はどうなったの?」
このようなやり取りを出来るほどに、僕たちは仲良くなった。
笹谷さんは物事を深く掘り下げて思考する能力に長けていた。意外と哲学的思考の持ち主で、僕が話した物語のキャラクターの心理をとことん追求しようとする。
僕には無い発想や予測を立てて、驚かされることもしばしばだ。
その日、一通り本の話を終えたところで笹原さんは唐突に切り出した。
「私ね、もともと文学少年の三上くんに興味があったんだ。この人絶対に私の知らない事をたくさん知ってるんだろうなって。なんか、かっこいいなって思ってた」
「……ないない。それはない」
照れ隠しに、僕は下を向いて髪をいじる。すると、その手をガシっと捕まれて、僕は思わず笹谷さんを至近距離で見ることになる。
「付き合ってください」
寝耳に水とは、まさにこの事だ。何がどうなってこうなっているのか。明るくて可愛くて人気者の彼女に密かに憧れていたのは、むしろこちらの方だというのに。その笹谷さんから、まさかの告白。これは、夢か幻か。はたまたここは小説の中なのか?
「ちょっと。なんか、言ってよ」
そう言って俯いた彼女の頬は、僅かに赤らんでいた。
こうして、いわゆる彼氏と彼女になった僕らは、それから色んな話をした。会うたびにその内容も深くなり、自然と家族の話もするようになった。
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