真紅の特注企画

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翌朝になると、津波は伊織を抱き締めて眠っていた。伊織はそっと腕から抜け出し、朝食を作って津波を起こす。今まではキッチンで津波から目覚めのキスを受けていたが、遅くまで作業場にこもるようになってからは、ベッドの上で目覚めのキスをするようになった。 そんな毎日が続き、週末は津波の体を心配して家でのんびり過ごし、出かける事を控えた。1週間、2週間と過ぎ、津波の携帯に宝石店から「結婚指輪が出来上がった」と連絡があり、久しぶりに2人で出かける。 宝石店で結婚指輪を受け取り、早速指輪をはめて、2人はレストランで食事をして帰る。その帰り、津波が申し訳なさそうに伊織に言う。 「最近、2人の時間が取れずにごめん」 「ううん。それより、無理してない? きちんと休めてる?」 「あぁ、大丈夫だ。ベッドで伊織の寝顔を見ると、それだけで癒されて、ゆっくり眠れるんだ」 「ふふっ、それならいいけど…」 「それに今、作っているのが楽しいんだ。伊織が着たらどうなるか想像しながら作っていくのが楽しくて、時間を忘れる」 「それで遅くまで作業しちゃうんだ……楽しいのはいいけど、体は疲れていると思うから…」 「うん、分かってる」 本当に楽しそうな笑顔を見せる津波に、伊織はそれ以上何も言えなくなり、仕方ないと諦め微笑む。 そしてその夜。2人で風呂に入った後、リビングで寛ぎ、津波は完成したたった1枚しかない真紅のベビードールを伊織にプレゼントした。 「えっ、キャミソールじゃないの? ちょっとデザインを変えるって」 「うん。初めは少しデザインを変えるだけにしようと思った。でも色々考えている内に、キャミソールよりベビードールを伊織に着せたいと思ったんだ。着てみて」 「えっ、今?」 「うん。あっ、1つ頼みが」 「ん…?」 「ショーツはタンガで頼む」 「えっ……タ、タンガ……」 津波からベビードールを渡され、伊織は寝室にあるチェストへ向かった。引き出しから真紅のタンガショーツを出し、部屋着や下着を全て脱ぎ、穿き替える。 前のVゾーンはブラと同じ赤色の生地とレース、後ろの腰の部分にも同じ生地とレースで逆三角形のモチーフ。それらを細いレースを紐状にして繋げ、尻はほぼ丸出し、尻と尻の間を通るレース紐がいやらしい。 (食い込む……ショーツの役割が……ない…) 見ている分には綺麗でいいのだが、いざ穿いてみると心もとなくムズムズした。受け取ったベビードールは、胸元がブラのような形になっている為、伊織はブラを着けずそのままベビードールを身に着ける。やはり着心地はよく、サラサラしている。だがデザインは、キャミソールよりもエロチシズムが増していた。 キャミソールと同じ透ける素材で全体は作られている。肩紐はキャミソールと同じ、胸元はレースをX状に縫い付け、ブラの形になるよう谷間とアンダーが少し絞られていた。そして胸の下から、中央で左右に開くように生地が腿へ伸びている。胸の中央のアンダー部分で少し生地が重なり、着ている見た目はキャミソールと変わらない。だが実物は胸から下はカーテンのように左右に開き、胸から下は肌が露出するデザインになっている。 (完全に夜用だよね……しかもこれに、これ……) タンガを身に着けさせた意味がようやく分かった伊織だった。だけど裾や左右に開く生地の縁取りにはレースが施され、とても綺麗で可愛く、伊織はエロさを感じながらも気に入っていた。 (私の為に作ってくれたんだよね。たった1枚の真紅のベビードール……やっぱり嬉しいな…) 少し後ろを見てみると、フワリと生地がスカートが開くように開く。可愛くて嬉しくて「ふふっ」と笑みを零していると、津波が寝室を覗いて入って来た。 「どうだ? 着たか?」 「うん。紅、どう?」 伊織は笑顔で尋ねる。だが津波はジッと伊織を見つめたまま動かなくなった。
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