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「じゃ、紐の幅を少し太くしてみたら? 例えば、靴紐みたいな平たい紐で、レースの紐にしたらアトは強く残らないかも」
「なるほど。平たい紐にレース紐か…中央の玉になる部分を固くしないようにすれば、アトは残らないかもな。それならショーツの方もしないとな」
「うん。あとはいいんじゃないかな。後ろのハートも可愛いし、少し太くなった後ろのレースも綺麗だし」
「ふふっ、そっか」
津波が嬉しそうに微笑む。
「あとはこれだね」
伊織は作業台にたたんで置かれているキャミソールを取り、広げてみる。だが広げてみるとそれはベビードールだった。
「ベビードール?」
「あぁ…」
「すごい……綺麗なレース…」
「だろ? このレース生地を見た時、このベビードールが浮かんだ」
小さなハートの刺繍が施された総レースの生地。肩紐はブラと同じようにハートのアジャスターがついたもので、白色の生地に総レースの生地が重ねられ、ブラの形が作られていた。
「ブラはいらないね…」
「うんっ」
伊織はブラを外し、ベビードールを身に着ける。胸をブラ部分に合わせ、アンダーからストンと骨盤の丈まで総レースのみ。レースの隙間から肌が透ける。そしてこのベビードールの一番の特徴は、両サイドのスリットだった。脇から裾までパックリと割れ、別のレースで縁取られている。
「紅……これ…」
「ふふっ、いいだろ? このスリットから、タンガやショーツのリボンが見える。可愛い…」
「だから……紐パンに…?」
「ふふっ……当然。このベビードールに合わせるショーツにしたんだ」
「でも、ベビードールは普段では着ないよ。夜しか…」
「うん、分かってる。前にさ、真紅のデザインで丈の長いキャミソールは普段使えないって話しただろ?」
「うん。わざわざキャミソールを着替えないって話した」
「そう。真紅は少し色気を足した普段使いの下着として、デザインしたものだ。真紅のコンセプトは『思わず口づけたくなるランジェリー』だ」
「うん…」
「その意味は、服を脱がせたら待ち切れずに、思わず肌に口づけたくなるような色っぽい下着と言う意味なんだ」
「だからわざわざ着替えたりしないものを?」
「俺としてはそうだった。でも販売を開始してから『恋人との初めての夜に』使いたいって言われ始めて、CMや雑誌にもそんなふうに取り上げられるようになった。女性達が準備をするようになったんだ。伊織もそうだっただろ?」
「うん。真紅は憧れの下着で、準備をして身に着けたいって思ってた」
「まぁ、それでもコンセプトは変わらないからよかったんだが。それで着替えて準備をするならと、伊織に真紅のベビードールを作ったんだ。あれは……最高だ」
ニヤニヤと思い出したかのように笑う津波。
「あぁそれで、真白は伊織をイメージしたって言っただろ?」
「うん…」
「このレース生地を見てベビードールが浮かんだけど、迷っていたんだ。真紅と同じようにキャミソールの方がいいかも知れないって。でも伊織が着替えて準備するのを見て、綺麗で可愛いベビードールをって決めたんだ」
「そっか。じゃ真白は『恋人との初めての夜に』を準備をして身に着ける下着なんだね」
「あぁ……純真無垢な女性から、彼の色に染まる女性に変わるんだ。伊織みたいに…」
「えっ…私?」
「そう。もうだいぶん俺色に染まってきてる」
ニヤリと笑う津波に、伊織は顔を赤くして頬を膨らませる。
「紅だって……いつか私色に染めてやるからっ」
「ふふっ、俺は……もう…染まってる…」
そう言うと伊織の腰を引き寄せ、津波はキスをした。
「もう……真っ紅だよ」
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