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興奮気味に話す伊織に、竹林が落ち着かせるように話す。
「ふーん、憧れてルージュに入社したって訳か。タイミングよく新卒採用の募集が出たよな」
「はい! 募集を見た時、すぐに問い合わせました」
「ある意味、運命だな」
榊が微笑んで言う。伊織はウーロン茶をゴクゴクと飲んで気持ちを落ち着かせ、先輩達に尋ねる。
「あの、先輩達はご存知なんですか?」
「ん?」
3人が首を傾げる。伊織は続けて尋ねる。
「真紅のデザイナーさんを、ご存知ですか?」
少し緊張しながら伊織が尋ねると、3人は顔を見合わせ榊が先に聞く。
「村尾、お前知ってる?」
「いや、俺は知らない」
「俺も聞いた事がないな」
竹林がそう答えて、榊が「俺も」と答えた。
「誰もご存知ないんですか?」
伊織が残念そうにそう尋ねると、榊が話し始める。
「デザイン課の誰かかも知れないけど、1つ1つデザイナーの名前は出ないからなぁ」
「そう…ですよね……」
「でもそう考えたら、いくら人気が出て売れてもデザイナーの名前は出ないんだよな。それって本人達はどう思っているんだろうな」
村尾がそう言うと、榊が答える。
「まぁな。でもデザイナーとして就職している訳だから、皆、納得しているんじゃないか?」
「てかさ、デザイン課って男性も女性もいるけど、あの真紅ってどっちなんだろうな」
竹林が言った言葉に、迷う事なく榊と村尾が答える。
「女性だろ。女性の下着はほとんど女性じゃないか? その方が色々気づく事もあるだろうし。男性下着は男性がデザインしているんじゃないか?」
「確かに、身に着ける側の方が、デザインを考えやすいよな」
「もしかして春風は、真紅のデザイナーに会ってみたいのか?」
榊がそう尋ねると、伊織はコクンと頷いた。
「その為に入社したって言っていいくらいです…」
「そうか……会えるといいな」
「はい…」
先輩達のおごりで伊織は財布を出す事なく、駅で見送られ電車で家に帰った。
帰ってすぐにスーツを脱いでハンガーにかけクローゼットにしまい、シャツや他の洗濯物を洗濯機にかける。ブラとショーツは浴室で手洗い用の洗剤で丁寧に洗い、乾燥機にはかけずタオルで水気を切った。脱衣所にある小さなハンガーにブラとショーツを干し、伊織はシャワーを浴びる。
浴室から出て体を拭き、洗濯機から乾燥機に入れ乾かす。そして伊織はタオルをしまっている棚の引き出しを開ける。
「明日はどれにしようかな…」
身に着ける下着を選び、ショーツを穿いて髪を乾かし部屋着を着て、乾燥機から洗濯物を取り出し、ブラを持ってリビングに戻った。洗濯物を片づけ、明日着ていくシャツを出し軽くアイロンをあて、ブラと一緒にソファーの横に置いておく。
「これでよし!」
ソファーでしばらく寛いで、伊織はベッドに入り眠りについた。
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