どうしようという気持ち

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どうしようという気持ち

その晩、私はベッドの上でゴロゴロしながら、英輔のことを考えていた。 まさかまさかね。 高校で同じクラスになった時に、「気軽に話しかけるなよ。」とか、「お前とは別々のクラスが良かった。」なんて冷たいことを言ったい英輔が? 私が好きになった人のことを相談した時は、「あんな女に人気のある先輩がお前に振り向くわけないだろ。諦めれば?」なんて言っていった彼が? 勘違いでしょう。勘違い。 男の子って好きになった女の子には優しくするものでは? 私のお父さんがお母さんに優しくするみたいに。 いや、でも私がため息を吐いたら心配してくれたしな…。 というか、本当に大輔に好かれていたなら、今まで気が付かなかった私って彼の友達に言われたみたいに鈍感なんじゃ? 悶々としてその日の夜はあまり眠れなかった。 だからなのか、あまりしないミスをしてしまった。 「あ、マズい。家にお弁当を忘れてきちゃった。」 うー。ショックだ。まあ、売店から何か買ってくればいいか。 でも、あんまりお金は使いたくないんだよな。 この前、服を買っちゃったから金欠気味だし…。 すると、隣の席の高山君に、「だったら、俺の弁当を分けてやろうか。なんか、頭が痛くてあんま食欲がなくてさ。この前、英語の授業で助けてもらったし、そのお礼。」と声を掛けられた。 これは嬉しい申し出だった。彼はお金持ちの息子なだけあって、そのお弁当は美味しい。ありがとう!あなたのお弁当美味しいから楽しみと返事を返そうとした瞬間だった。 どさりとコンビニによく売っているようなサンドイッチと焼きそばパンを机の上に置かれた。なんなんだろうと思うと英輔だった。 「それやるよ。」 「え?」 その時に、私は彼に忘れ物をした時に助けてくれる人を好きになると話したことを思い出した。こ、これは確定では。 「う、受け取れないんだけれど。」 「なんだよ。俺のやった飯が食えないのかよ!」 「一昔前のパワハラ上司みたいなことを言わないで!」 いや、待ってほしい。 心の準備が欲しい。 「大体、高山からは弁当を分けてもらおうとしてたじゃん。なんで、俺から飯は受け取れないんだよ。」 「そ、それは…。」 だって、そもそもお母さんから言われたあんな言葉を真に受けてたわけじゃないし。 でも、あなたから受け取っちゃったら、英輔に忘れ物をした時に助けてもらったことになるわけで、つまり「あなたのことを好きになってもいいよ。」的なサインになっちゃうんじゃ? 私たち、(というか英輔が一方的に)が騒いでいたので、クラスの視線が集まり始めて、英輔は冷静になったのか彼は机の上の食べ物を手に持って行ってしまった。 「なんか、ごめん。俺のせいで揉めた?」 高山君は眉間に皺を寄せてそう言った。 私は「いや、そんなことない…。多分、忘れものをした私と変なこと言ってきた英輔が悪い…。」というのが精一杯だった。 結局、お昼は仲のいい女友達に食べ物を分けてもらうことで乗り越えた。
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