振っていない!

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振っていない!

「それって、大木君は振られたって思ってるんじゃない?」 私の中学生の頃からの友達である美寿子に真顔でそう言われた。 私だけではどうしていいか分からず、モテ女である彼女に頼ったのだ。 そして、今まで何が起こったのかを説明した途端、このセリフである。 「いや、振ってないけれど?!」 私は思わず叫んだ。 私が英輔を振る?いつの間にそんな事態に? 「だって、忘れ物をした時に助けてくれる人を好きになるって言っておいて、向こうが助けてくれようとしたら拒否したんでしょ?私だったらもう脈無しだと判断して次に行くけど。」 あっさりと彼女は言った。 す、すごい。 流石、美寿子…。私とは違う肉食女子っぷり…。 「とにかく、晴子。あなたは大木君とどうなりたいのかをはっきりさせるのが大事よ。このままだと気まずくなって終わるだけよ。」 きっぱりと美寿子は言った。 そ、そんなの言われなくても…。 「もう既に気まずくなってるよー!同じクラスなのに、向こうは目が合っただけで、ちょっと嫌そうな顔をするんだもん。」 そうなのだ。もう猛烈に気まずい。 もう英輔に好かれてるなんてナイナイと思ってた頃に戻りたい。 「大木君を男の子としてはナイと思ってるなら、このまま気まずいのを我慢して終わるコースもありだと思うけれど。」 ちょっと声を優しくした美寿子が言った。 「そんなの分かんないよ。いきなりそんな風に見れないし、時間が欲しい。」 うう…。我ながらはっきりしない…。 だって、男の子に好かれたのなんて初めてだし。 「だったら、それをそのまま伝えれば?」 そっか、それでいいんだ。 こうして、気まずくなった英輔に私の戸惑っている気持ちを伝えることにしたのだが。 英輔が私と二人になるのを回避しようとするのだ。 まさか、同じ学校の人たちがいる前で、こんな話をするわけにはいかない。 本当にこのまま時間だけが経っていきそう…。 そんな風に悩んでいた時に、学校が終わった後に家の近所に一人でいる英輔を発見したのだ。恐らく、彼は野球部で特訓を受けた帰りだろう。 これはチャンスなのでは?! 「英輔!」 私は思い切って彼の名前を呼んだ。
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