待ってもらう時間

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待ってもらう時間

「なに?俺に用はないだろ。」 英輔は困った顔をしてそう言った。 ああ、これは…。 美寿子の考えが当たっているのでは!? 「あの振ってない!」 慌てて私は言った。 なんだよ。いきなり振ってないって。意味不明だよ。 でも、これだけは伝えなくちゃいけなかったんだ。 ほら、英輔がびっくりした顔をしている。 「お前、高山のことが好きなんじゃないの?それとも二股掛けるつもり?」 ほら、高山君は私にお弁当を分けてくれようとした人ね。 と言うか…。 「二股なんて高度なことできないよ!っていうか、彼の申し出もちゃんと断ったよ。」 すると、急に英輔に手を握られた。 わあ、すっかり手が大きくなってる…。 当たり前だよ。手を繋いだのなんて、幼稚園の頃以来じゃない? うう、すっかり男の人って感じ。 「じゃあ、本当は俺のことが好きだったって思っていいわけ?」 「そ、それは良くない。あの、からかっているわけじゃなくて。」 必死に私は言う。 うう、手を繋ぎっぱなしだよ。 「ずっと英輔のことを幼馴染だと思ってたでしょう?あのちゃんと考えてみるから待ってほしいっていうか。」 「いつまで?」 いつまで? そんなこと恋愛初心者に決めさせないでほしい。 「えっと1年とか?」 「長すぎだろ!」 呆れたように英輔は笑った。ちょっと空気が緩くなったかも。 私もちょっとリラックスできた。 「それじゃあ、あの1か月。1か月だけ時間を頂戴。」 「わかった。1か月な。俺と付き合うかどうか決めるまでに、他の奴に忘れ物をした時に助けられるなよ。」 そういうと、なんか恥ずかしくなったのか、英輔はちょっと速足で行ってしまった。私も少しドキッとしたかも知れない。 でも、英輔とキスしたり、ハグしたり、甘い言葉を掛け合ったりできるんだろうか。そんなところをクラスの人たちに見られたら、散々からかわれそうだな。 そんなことを考えながら、私はふらふらと家に帰った。 とにかく今日はよく勇気を振り絞って頑張った自分! 普段は太りたくないから我慢しているけれど、甘いものでも食べて癒されよう。 そう思っていたのだけれど、案外疲れていたらしく私はこたつの中で真夜中になるまで眠ってしまったのだった。お母さんには起こそうと何回も声を掛けたのに眠りっぱなしだったと呆れられた。
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