水族館にて

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水族館にて

そして、水族館デートの当日。 「お、ワンピースだ。」と英輔が言った。 私は買ったばかりのワンピースを着ていった。 デートにワンピースってベタじゃない? っていうか、あざとくないと思ったのだが、美寿子にあざといのが何が悪いの?と言われたから、思い切ってこれにしたのだ。 「これ、どう?」 なんか大丈夫だろうか。 男の人目線でダサかったりしない? 英輔の反応を伺ってしまった。 「どうって、ワンピースはワンピースだろ。」 いや、普通そこで可愛いよとか言うんじゃないの? 心の中で大絶叫をしてしまった。 でも、美寿子曰くスマートじゃない男の英輔らしいかもしれない。 「もう行こう。」 なんか肩の力が抜けちゃったよ。 そう言って彼の手を取ると、(デートでは手を繋ぐらしいと雑誌に書いてあった)出発することにした。 「あ、クラゲだ。」 私が言うと英輔はクラゲだなと同意してくれた。 き、気まずい。 普通、デートって何を話せばいいんだろう。 「英輔、楽しい?」 「え?ああ。楽しいとかそれどころじゃない。」 「え?」 楽しいどころじゃない? 「俺、デートするの初めてなんだよ。おまけに、相手が晴子だし。なんかガチガチに緊張してて…。お前こそ、退屈じゃね?」 もっと経験値積んどきゃ良かった。 そう続けた英輔の横顔をまじまじ見てしまった。 「英輔って私に恋してるんだね。」 「今更?!」 英輔は驚いたように叫んだ。 「なんか急に実感が湧いてきたっていうか。なんとなくそうなんだろうなと思ってたけれど…。」 私が下を向いてごにょごにょ言っていると、英輔にいつのまにか離れていた手を握られた。 「俺はそういう目で見れない奴とデートなんてしない。」 英輔はぽつりとそう呟くように言った。 なんて歯の浮くようなセリフをいうのと思って、彼を見たら恥ずかしかったらしく、顔が赤くなっていた。 なんだか急に私も恥ずかしくなってきた。
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