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いや、まあ、ここでこんなに励ましたって幽霊だから聞こえない訳だけど。
「みーくん? なぁに、これ?」
いつの間にか、戻ってきた女が男の手帳を覗き込んでいた。
男は固まる。俺も全然気付かなかったので、悲鳴を上げてしまう。マジでいつの間に……?
「手順……? セックスのために……?」
女が男の恥部をあっさりと読み上げる。男は両手で顔を覆っている。女は目が泳いでいる。
窓際タイムは今日はなしか。別の意味で穏やかに一日を終えられそうにないけれど。
仕方ないから男に一晩中慰めの言葉をかけてやろう。聞こえないだろうけど、出来る限りのことはしたい。ここに幽霊が増えても困る。
「ーーなぁんだ。みーくんも初めてなんだ」
だけど、死人が出そうな空気は女の一言であっさりと壊される。
「えっ?」
「あたしも初めてだから、不安だったんだよね」
鼻に掛かった声で演技しているのが端から見ているとわかるのだが、それでも俺には女が優しく見えた。
「こんなに調べてくれてありがとう」
男の瞳はキラキラとしている。騙されているが、知らぬが仏という言葉もある。
女の逆転ホームラン(???)で窓際タイムはまた始まる。
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