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卒業の日に
「宮脇」
同じクラスの坂口君から突然名前を呼ばれたのは、3学期が始まった日だった。
私は身体が固くなった。坂口君は制服を着崩す、髪を染める、授業をさぼるといったことをしており、素行が良い生徒とは言えなかった。
私が通っている中学は校則が厳しく、教師たちも私たちの見た目や行動に目を光らせていた。
そのおかげかはわからないが、私たちの学年は校則をしっかり守る子が多い。そんな中で坂口君は異質な存在だった。
私が不思議だったのは、先生たちはそんな坂口君に注意をしていないようだった。その疑問を友人の希子に言うと、希子は「怖いんだよ」と言った。
「怖いって何が」
「坂口って他校の不良と友達って噂もあるし、見た目も私たちの学年の中で飛びぬけて不良じゃん。暴力も平気でふるいそうだし。だから先生たちも遠慮してるの。よく考えてみればずるいよね。スカートの丈が1センチ短いだけでもネチネチ言うくせにさ。本当は坂口みたいな生徒を叱らなきゃいけないと思わない?私も不良になっちゃおうかな。そうしたら、叱られないかも」
希子の冗談に笑いながらも、言う通りだと思った。注意したら校則を守る子の前では大きな顔をして、怖い子のことは無視する。先生たちの気持ちもわからないではないが、大人としてどこか情けない感じがした。
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