涼くんの大学

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涼くんの大学

〈里奈’s vision〉 「何で……」  涼くんがいるなんて聞いてない。 「いいから」  望花が私を涼くんの隣に座らせる。  涼くんが近すぎる。 「アタシ、涼と別れたから」 「え、わか、え?」  涼くんと別れた?それって。 「健人と付き合うために?」 「何言ってんの。健人は里奈と付き合ってんじゃん」 「いや、昨日健人に別れようって言われたんだけど……」  厳密には、付き合っているふりをするのをやめよう、だったけど。  私の言葉に、望花は明らかな動揺を見せた。彼女の白い肌が紅潮していく。こんな望花、初めて見た。 「り、里奈ちゃん、健人と別れたの?」  隣で涼くんが尋ねてくる。こくりと頷いた。 「え、それは、大丈夫なの?里奈ちゃんは」  心配してくれる。本当に涼くんは優しい。 「うん。もともと、付き合ってるふりしてただけだから」  正直に打ち明けた。  口止めされてないし、望花のためにも本当のことを伝えた方がいいと思った。 「な、何それ。何でそんなこと」  涼くんが混乱している。 「望花と涼くんを別れさせるためだって、言ってた」  望花のために言ったのだけど、涼くんが「は?」と怒った声を出した。 「やっぱりあいつ、望花ちゃんのこと……。そのために里奈ちゃんを利用したのか。健人のこと、ここに呼べる?」  怒ってるみたいだ。 「健人、風邪引いたみたいで学校休んでたし、呼ぶのは難しいかも」 「そ、そっか」 「涼くんは、握りしめた拳を開いて、せわしなく自分の膝をさすった。 「あ、寒い?涼くんも風邪移っちゃった?」 「え、いや、これは、何となく……」 「別れさせて、どうするつもりだったって?」  望花が私たちのやりとりに割って入ってきた。  顔の色は元に戻っているけど、耳がまだ赤い。 「わ、分かんないけど、多分健人は望花のこと」 「それで、何で里奈は協力したの?」  私の言葉を遮って、望花は問いを重ねた。 「や、ち、違うの。私、望花を傷つけるつもりなんて」  弁明しようとした私を、望花は優しい顔で見た。こんな表情も初めて見るかもしれない。 「責めてるわけじゃないよ。ただ、何で健人は、里奈を協力相手に選んだんだろうね?」 「そ、それは、私が望花と仲がいいからじゃないかな」  利害が一致してるから、なんて、涼くんの前で言うわけにはいかない。 「まあいいけど。アタシ、まだ体調万全じゃないし、帰る。二人はゆっくり話してけば」  望花は、私たちを残して、足早に公園を出ていった。
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