ずっとあなたが好きだ！～67歳の推しができた22歳の話～

２．誰にも言えない、言っても伝わらない

「風ちゃんは、誰か好きな俳優とかいるの？」
　大学での生活がいよいよスタートし、私の周りの環境も一変した。新しくできた友達が私と距離を縮めようと、当たり障りのない質問をしていた時に、この質問は投げかけられた。
　私は、眉を下げて軽く笑った。
「いやあ、あんまりドラマとか長続きしなくてね……」
　この時もう既に、自分が佐野さんを好きだという認識はあった。ただ、これを友達の前で言うことにはまだ抵抗があった。
　佐野史郎、と言えば、恐らく一番に連想されるのが、木馬であろうからだ。
　皆まで言わんとも、分かり切ったことだ。私だって、彼のことを最初に『世にも奇妙な物語』で見た時は、「冬彦さんの人だ」と思った。
　そんな昔のドラマを観ている人なんていないだろうが、彼がマザコン男を演じたことは周知の事実だ。演技自体の素晴らしさを語ったところで、そもそも演技に特化した観方をしていないだろうから、誰に話しても困らせてしまうだろうと思っていた。
　だが、彼の作品を追いかけることを日課にしていると、これを共有せずにはいられなくなる。