3.私はどうかしている

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 リアルタイムで彼の演技を追うようになれたのは、2020年放送の『私たちはどうかしている』からだった。それまでの作品も勿論観ていたが、再放送や一回きりの特番が多く、その時々でしか楽しめなかったのだ。  だから毎週放送のこのドラマは、待ちきれない一週間を生み出すほどに、私を興奮させた。  いつ出て来るのかとテレビにかじりつき、子供のようにそわそわしていた。この頃は既に両親の理解もあったので、私が佐野さんを推していることには別段異議は示さなかったのだが、私の熱の入りようは心配していた。 「全然出ないね、このドラマじゃないんじゃないの?」 「そんなことないでしょ! 役名まで分かるもん!」 「何?」 「高月宗寿郎。何だよ、その名前! 名前だけで貫禄果てしねえのよ!」 「落ち着け。主役じゃないんでしょ? 一話には出てこないんじゃない?」 「えー!? それは困る! 予告には出てたのにぃ! 出ないのはやだよぉ! 来週まで待てな――」 『静かにしてもらえんかね。猫が逃げてしまうだろう』 「来たぁあああああ! わぁああああああ!」 「うるさwwwww」 『調子がいいから落雁作っちゃった。お一つどうです? ……あぁ、落っことしちゃった』 「うおぉおおおおお! 何何何その台詞!? かかか、可愛い!」 「可愛い……?」 「落としたのでいいからその落雁下さい!」 「こわ」
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