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大学入学直前の春休み。大学生になると言っても一体何をすればいいのか分からず、家でごろごろしたり、執筆しようにもキーボードに手を置いたことに満足してそれっきりな毎日が続いていた。
そんな時、父が昔から録り溜めていたというビデオテープをいくつか持ってきた。それは、私が大好きなテレビ番組『世にも奇妙な物語』であった。
短い時間の中でのどんでん返し、現実世界にありそうでない世界観は、当時演劇を齧っていた私にとって大きな影響を与えた作品だ。幼少期から物語を作ることが好きで、高校演劇時代にほぼ全ての作品を中心となって手掛けたことは誇りだ(結果については触れないが)。
高校を卒業し、渋々演劇から離れざるを得なかった、そんな時期。今は色々な作品を見て、いつかの再開を夢見よう。そんな思いでテレビを眺める日が始まった。
父が録り溜めていたビデオも、とうとう全て見終えてしまった。もしかしたら、『世にも奇妙な物語』の殆どの作品を網羅したのではなかろうか。聊かの達成感と共に、私は自分の中の妙な気持ちに気が付いた。
「あの話、もう一回見たいな……」
話が面白かったからもう一度見たい、そんな気持ちとはまた別の感覚を覚えていた。
それが、『地獄のタクシー』という一本だった。
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