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「貴様は、クビだ!」
主人公は、大病院で院長を務める男。乱暴な治療を強行したり、無慈悲に動物を薬品の実験に使ったり、患者を金としか見ていなかったりと、この先あらすじを聞かずとも、天罰が下ることが見え見えの典型的な悪役である。
酒に酔った男は、拾ったタクシー内でも好き勝手をする。禁煙車にもかかわらず煙草をふかし、果ては、飛び出してきた犬を避けるため運転手がブレーキを踏んだ時、迷惑そうにこう吐き捨てる。
「なんだ、犬なんか轢き殺せばいい!」
その後財布を忘れたことに気が付いて病院へと戻るのだが、そこは亡霊の巣窟と化しており、男はこれまで患者や動物に行ってきた横暴の報いを受けるのだ。
多少グロテスクな部分はあるものの、展開としてはよくある因果応報系。童話や怪談と言っても良いだろう。つまりは子供でも分かるくらいの単純な話だ。
その頃の私は、芸術的なストーリー性や、鳥肌の立つような伏線に強い憧れを抱いており、こういった単純な話はさして好きではなかった。そんなものは評価されないだろうと思い込んでいた。
しかし、なぜか私はこの作品に魅了された。その理由は、この作品を見返す度に段々と気がついていくことになる。
きっと百人が百人、この話を見たら「ざまあみろ!」と言うに違いない。
見た百人に、そう思わせる演技なのだ。
見た人全員に同じことを思わせる演技が、果たして出来るだろうか。
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