7人が本棚に入れています
本棚に追加
【砂ぼこり】
次の街へいこうと
荷物を背負うと身動きが取れず
またひとつバスにおいて行かれた。
少年が睨んでいる。
「裏切りもの」
おもわず落とした本からのぞく
いつ撮ったかもわからない写真
写真の少年は微笑んでいた。
あの頃側にいてくれた、もういないあの人と。
刺すような雨も、握りしめたガラスも
あの人への言葉も
すべて置いてきたのに。
「ただ何かになりたかった」
おもえばバス停のベンチも随分色褪せた。
今、風が砂ぼこりをあげる。
最初のコメントを投稿しよう!