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瞳の両親へ日曜日に謝罪をしたいと伝え、ディナーに誘うとがあっさりと断られたが、土曜日にランチに行くことはOKをもらうことができて迎えに行くと言ったが、それもあっさり断られた。結局、店の近くの駅で待ち合わせをした。
取引先と時々使う個室のある料理屋の支店で、庭が見事で落ち着いた店だ。
二人で食事をしていると昔のことを思い出す。
ただ、瞳は離婚したばかりで時折何かを考え込むことがあり、きっと元夫のことを考えているのかもしれない。
そう思うと、少しイラッとする。
送っていくという話を断られ、瞳は一人で電車で帰っていったが、それでもまた食事に行く約束を取り付けられたことにホッとした。
日曜日、約束の20分前に瞳の家に到着した為、少し離れたところで時間になるまで待つことにした。10時ピッタリに玄関チャイムを鳴らす。
チャイムと変わらないくらい心臓の音が激しい。
あの時は、勢いでこのチャイムを鳴らした。
そして、あっさりと打ちのめされた。
利息と言っておふくろが渡した500万円に上乗せをして600万円を茶封筒に入れて返却された。
500万だけでいいと思ったが、意地のようなものもあるのだろうと思い素直に受け取ってから改めて謝罪をした。
瞳の父親からは我が家とはもう関わらないでほしいと言われたが、その言葉は守れないだろう。
家を出てコインパーキングまでの道を歩いていると瞳が追いかけてきた。
俺が次のランチの話をすると呆れ顔で父親が言っていたセリフを言ったが、聞こえないふりで「また連絡する」と言って瞳の返事を聞くことなく車を発進させ、そのままおふくろ達が住んでいるあの家に向かった。
フミさんに迎えられて家に入ると、おふくろはリビングでお茶を飲んでいた。
あいつも親父も居ないらしい。
「凌太どうしたの?この間の事でも謝罪に来た?」
いつだって自分は正しいと思っている。
どこからそんな自信があるのか、人間性を疑う。倉片の人間は皆こんな程度なのだろう。
「俺が謝罪するのは貴方じゃない。瞳の父親から返すように預かってきた」
そ言ういって茶封筒をおふくろの目の前に置いた。
「ちなみに、利息がついているそうだ。いい投資をしたね。倉片にそれくらいのカイショウがあれば使用人の孫と結婚せず、俺も生まれずにすんだかもな」
顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がったおふくろを無視して家を出た。
マンションに帰り、ソファに座って脱力する。
スッキリした。
瞳に[今日は謝罪の場をありがとう]とメッセージを送ると[おやすみ]と返事があった。
返事を送ってくれことに暖かい気持ちになった。
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