<決着>

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<凌太> 秘書が「早いですね」と言いながら車のドアを開けたので後部座席に座ると特に指示がないため車はマンションに向けて走り出した。 「スメラギドリンクさんから良い話は聞けましたか?」 「あの二人に関して不安が残るくらいかな」 「そうですか」と言うとそれ以降は話をかけてくることはない。仕事ができて空気の読める男だ。 [今日の夕方、凌太の婚約者という沼田真子さんが会社に来ました] もう一度ラインを確認する。 沼田吉右衛門商店のお嬢か・・・いつのまにか婚約者になっているとは・・・とか考えている場合じゃない。慌てて瞳に電話をかけた。 「沼田さんが瞳に会いに行ったのか?断じて関係は無いから、おふくろが勝手にすすめていて何度か話をしただけだし、きっちり断っているから沼田さんが瞳に会いに」誤解を解きたくて必死に説明しようとしたところで 瞳の「大丈夫だよ」の一言で力が抜けたが、瞳から聞かされた内容に無性に腹が立った。 「バカにするにも程がある」 以前このスマホに電話をかけてきたことがあった。またかけてきた時にわかるように吉右衛門という名前で登録をしていたため連絡先を探し出すことができた。 連絡先をタップしようとして止める。 ただの電話じゃだめだ。 部屋に戻ると吉右衛門の名前をタップする。 夜の10時を過ぎているが失礼なヤツに配慮するつもりはない。 数回のコールの後 『はい』と遠慮がちな声が聞こえてきた。 「わたしが電話をした理由がわかっていそうですね」 『は・・い』 以前の威勢とは随分と違う。 「ラインかズームかどちらならすぐに繋げられますか?」 『え?あの』 「音声だけでは伝えたい事も伝わりづらいですから、で、どっちです」 『今からですか?もう遅いですし・・・』 「あなたの都合は聞いてません。そもそも、自分は他人(ヒト)の都合はお構いなしで会社に押しかけて自分の時は配慮しろなんて言わないですよね。それに今日のわたしは相当機嫌が悪い。理由はご存知でしょう?もし今日話をしないなら沼田吉右衛門商店を潰しにいきます。脅しではない、甲斐なら出来るんですよ」 『ラインでお願いします。ただ、今はラフな格好なので30分時間をいただきたいのですが』 「5分です。出来ないなら」 『わかりました』 「ショートメッセージでラインのIDを送ります。時間厳守です」 そう伝えて電話を切りショートメッセージを送った後、タブレットをセットしてビデオ通話をしているところが映るようにセットしてからミネラルウォーターを冷蔵庫から出してソファに座ってから時計を確認するともうすぐ5分が経つところだった。 『こんばんは』 スマホに映る沼田真子は髪を結い上げ着物をキリッと着こなしたすまし顔ではなく、化粧っ気の無い顔に髪は後ろでまとめシャツの上にカーディガンを羽織った姿だ。 「まずは、この会話は動画で撮ってます。それから前提として、わたしは沼田さんとは婚約していないし、そんな話も聞いてません。これはわたしの母が言っていることでしょうか?」 『はい・・八栄子さんと』
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