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<凌太>
リビングのテーブルの上には有名割烹料理店監修のミニおせちと瞳が作ったお雑煮、金箔入りの日本酒が並んでいる。
家でおせちを食べるなんてどれくらいぶりだろう。
ガラス製のぐい呑みに入れられた金箔入りの酒を手にもつと瞳が「あけましておめでとうございます」と言って目の前に掲げる。そのぐい呑みに自分のぐい呑みを軽く当てるとチリンという音と共に金箔がゆらりとゆれた。
昼過ぎに近所の神社へ初詣をした。
年明けから駆け足をするように日々が流れていく。
そんなある日
「Ryoってもうあの家には住んでいないの?」
瞳がサンプルを送ったが返送されてきたということで連絡をしてきたのだ。
認知の取り消しはスムーズに進み、俺も爺さんとの養子縁組が成立した。
そして、お袋と親父の離婚も進められている。
今更になって親父がお袋とやり直したいとか言っているそうだが18年もの間愛人の元に通い、その後は愛人の子供と同居させられ、トドメは血のつながりが無かったというオチまでついた。
今まで、意地で縋り付いていた妻の座になんの未練も無くなり財産分与と多額の慰謝料請求をしたようだ。そして、倉片呉服店は甲斐が完全に改革をする事になった。
沼田真子に触発されたようだ。
あの家は財産分与の為に売却する事になった。
三島亮二に関しては、その前にすでに出て行った後だから郵便物が返送されてしまったんだろう。
三島亮二がどこに行ったのかは俺には全くわからないが、もしかすると親父なら知っているかもしれないが、聞こうとも思わない。
そう言ったら、瞳は「里中くんに丸投げする」と言っていた。
親父は町田Eg株式会社の初代社長として就任したが、従業員は5人ほどの小さな会社だ。
甲斐から離れた段階で、太陽光事業は町田Egとの取引はせず、他の会社へ外注をすることにしたから親父はもとい、元親父は相当苦戦するだろう。
本来なら、自分は甲斐商事の会長となり三島亮二に町田Egをプレゼントする予定だった。
それまでも、やりたいように不正をしてきたんだから愛した人との思い出に浸りながら会社を運営していけばいい。
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