正人side<焦りと好奇心>

1/3
前へ
/137ページ
次へ

正人side<焦りと好奇心>

「いつも愛妻弁当なんて羨ましいな、結婚して何年?」 休憩時間に瞳が作ってくれた弁当を食べていると村上チーフが声を掛けてきた。 「2年です」 「じゃあまだまだラブラブって感じですね」 確かオレよりも二歳年下だから27歳だと思うが子供がいて春にこの店舗に配属されて来た時に待ち受けになっている子供の写真を見せられた。 「いや」 「子供はまだですか?可愛いですよ。だけど、奥さんが子供ばかりに構うから家に帰ると疎外感があるんですよ。だから竹内さんがうらやましい」 子供の話はしているが、何せオレと瞳には年収の差があって瞳が妊娠して働けなくなったらオレ一人の収入では苦しくなるのは目に見えている。だから今は二人で貯蓄をして備えている状況だ。 「小遣いなんか月に4万円だからお昼をうまくやらないと厳しいですよ。その点、竹内さんはお昼代がかからないから羨ましい」 4万か、それでも役職のある村上チーフはオレよりも年収が高いんだろうな。 オレは実質自由になる金は月に3万円だ。 瞳と結婚する時にオレの名義で口座をつくり、その口座で瞳には代理人カードを作り給与からお互い15万円づつを入金し家賃や月にかかるお金としている。 クレジットカードも家族カードを作って日用品や食料などもここから使っているがイレギュラーなことがあって足りない時は瞳が出してくれている。 それ以外に将来子供ができた時に瞳が休めるように瞳名義の口座に3万円づつとボーナス時はその時に応じて加算している。 ただ、お店と家の往復と時々ある飲み会くらいしか使うことはないからヘソクリ的なものも少しづつできている事も確かだ・・・ 「毎朝お弁当を作ってくれる妻に感謝ですよ。でも、子供がいると楽しいんじゃないですか?」 「いやでも、前は仕事の愚痴とか聞いてもらえたけど今は奥さんにそんな余裕ないですから」 チーフはそう言った後、スマホを取り出すとアプリを立ち上げ、画面をオレに向けた。 「何ですか?」 「パパ活アプリです」 「え!浮気してるんですか?」 チーフは慌てて人差し指を唇に持っていって“静かに”というゼスチャーをした。 スーパーだとパートの既婚女性も多いため浮気や不倫のワードは危険だ。 「そう言うのじゃないよ、月に一度くらい若くて可愛い女性と食事をして話を聞いてもらうだけ。おれはそれでリフレッシュして女性は食事をしただけでお小遣いが貰えるっていうギブアンドテイクが成り立ってる感じかな」 「でもそれって」 「ストレスを溜め込まないから家では良い夫でパパでいられるしね、まぁ竹内さんにはストレスとかないだろうけど」 「お金もかかるんじゃないですか?」 「安全に楽しみたいから会費はかかるけどアプリを使ってるけど、人によってはゲームとかSNSとかでやってる人もいるようだよ、って、もう休憩終わりだ」 そう言うとチーフは出て行った。 ストレス 今の生活に不満は無い。 スナック菓子のリサーチにスーパーに来た瞳に一目惚れした。 勇気を出して食事に誘ったら来てくれて、話をしても楽しくてどんどん好きになった。 おれを下に見ていた奴らに、瞳が恋人だと紹介すると羨ましがられて気分も良かった。 誰にも渡したくなくてプロポーズをしてOKを貰ったが、結婚すると瞳との格差をまざまざと知ることになった。 そういう格差を感じさせないようにしてくれることが、仕事をしながら家事も完璧にしていることが二人の未来を考えてくれていることが時折オレを卑屈にさせた。 SNSでもやってる人がいるって言っていたっけ。 ネットでSNSでのパパ活について調べた後、ツイッターのアカウントは瞳も知っているし、裏アカを作って間違えるといけないから“正”と言う名でインスタの新規登録をすると休憩時間が終わり仕事に戻った。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1239人が本棚に入れています
本棚に追加