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あの時、インスタのアカウントをとってからしばらくそのことを忘れていた。
そのまま忘れていれば良かった。
電車の中でふとインスタのアイコンが目に入ってパパ活を検索すると、思いのほか募集があった。
チーフは安全に楽しむために入会金の必要なアプリを登録していると言っていたが、自分がちゃんと見極めれば問題はないように思える。
そもそも毎日のように人をみているわけで文字だけではわからなくても、3000円で顔あわせがあると書いてあるしそこで見極めればいい。
なんで、そんな風に思ってしまったのか。
何人かの投稿を見ていると比較的近そうな募集を見つけ先ずはフォロー申請を入れるとすぐに承諾及びフォローバックがあった。
行動の速さに驚いたが、こちらも承諾をすると今度はすぐにメッセージが届き、フォローのお礼とこれからもよろしくね的な文章が返ってきた。
アップされている自撮り写真は多少盛っていたとしてもそこそこに可愛い。
いきなりパパ活について書いてもいいものか悩んだが、向こうだって募集をしているのだから早く意思表示をしておいた方がいいのかも知れない。
パパ活について自分は初心者である事、どういう流れになるのかメッセージを送ると可愛い絵文字付きで説明があった。
何度かメッセージのやり取りをして、自分が土日は基本的に仕事がある事を伝えると、来週のオレの休みの日に学校の講義が終わってから会うことになった。
いつもは、携帯で漫画を読んだりニュースサイトを見たりして電車の時間をすごしているが、女の子とこんなふうにやり取りすることが楽しくあっという間に駅に着いた。
帰宅して瞳と食事をしながらも、先ほどのメッセージのやり取りを思い出してつい顔が緩んでしまう。
「正人?何か楽しいことでもあった?」
急に声をかけられてびっくりしながらも「いや、ちょっと思い出し笑い」と言い訳したが、本当のことだからすんなりと答えることができた。
「えーそうなの、どんな?」
「いや、チーフとの会話だけど面白かった事だけは覚えているけど、どんな内容かと言われても答えられないかも」
瞳は「そういうのあるかも」と笑った。
少しだけ胸がチクリとしたが別にこれは浮気じゃ無い。チーフだって言っていた。
そう自分に言い聞かせた。
瞳が風呂に入っている時にμというアカウントからメッセージが届く。
あの子だ。
【写真いいですか?】
確かに、おれはμの写真を見たけど、向こうは知らないし。
そこで、写真フォルダの中を探してまぁまぁよく写っている写真から自分の顔だけを切り抜いた。隣には瞳が映っているから流石にまずだろう。
顔を見てやっぱり嫌だって言われるかも知れない。もし、そうなったらパパ活なんてすっぱりと辞めよう。
そう思って写真を送ったが【優しそうで安心しました】という返事がきた。
意外とオレはイケてるのかも知れない。
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