正人side<深みにハマる>

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正人side<深みにハマる>

みゅーちゃんは本当に聞き上手だった。 会社での事を愚痴っても、ただウンウンと聞いてくれた。 早番の時に仕事終わりに食事をしたり、街を歩いたりした。 ある時、ジュエリーショップの前でみゅーちゃんがウィンドウの前に立って何かを見ていた。 「欲しいの?」 「プラチナのピアス。小さくて目立たないやつならいつでもつけられると思って」 瞳が毎朝お弁当を作ってくれているから、ほとんどお金を使うことはなく少しなら預金がある。 ピアスをプレゼントしたら人気の無い路地裏でキスをされた。 すごくドキドキした。 こんな風にときめいたのは久しぶりだ。 「まーくんならもう少しお小遣いをもらえたらもっと違うこととかしたいと思ってるんだけど」 そう言って小首をかしげる仕草をする。 「違うこと・・・」 腕に抱きついて胸を押し付けてくる。 それって、あれだよな。 でも、流石にそれは 「みゆ、まーくんが好きだし。あと、お小遣いも増えると嬉しいし、そうすれば卒業してもしばらく自由でいられるしぃ、ダメ?」 そんな風に言われた時、ホテルが目に入った。 今思えば、誘導されていたのかも知れない。 でも、あの時のオレはみゅーちゃんを支援しているんだから、これは浮気じゃないと言い聞かせてみゅーちゃんの肩を抱いてホテルの門をくぐった。 みゅーちゃんとの行為は新鮮で奉仕がとても上手ですっかりハマってしまった。 瞳はいそがしい事もあり、それほど積極的ではないし愚痴を聞いてくれてエッチも上手くてそれが金でカタがつくのは楽で良かった。 体の関係ができてからはみゅーちゃんも要求が多くなってブランドのバッグや小物を強請ってくるなり流石にオレの預金では足りなくなって瞳と将来の為に一緒に貯蓄している通帳からお金を借りた。 お互のメイン通帳からの振替になっているからあとでこっそり返せばいいと思ったが、カードは瞳が持っている為、委任状を書いて引き出すと当然のことながら引き出した記録が残ってしまった。 「短大卒業後はどうすの?」 ラブホのベッドの上で賢者タイムに入り冷静になる。 流石にヘソクリも無くなって月々使える金額に翳りが出て、何よりも女子学生への援助だと言い聞かせてギブアンドテイクだと思い込んでいてもやっていることはハタから見たら“浮気”だと思われるだろう。 最近は、事が終わるとこんなことを考えることが増えてきた。 だから、そろそろ終わらせる事を考えないといけないと思って聞いてみた。 「あー、うん。何かもう結婚とかしたいかなぁ」 ん?そんな相手がいたのか! 慌てて起き上がりみゅーちゃんを見る。 「結婚?」 「みゆ勉強とか好きじゃないし、仕事もしたい事がないから。でも。まーくんを楽しませてあげられるでしょ?」 着衣をつけないままのみゅーちゃんがいつものように小首を傾げて朗らかに言った。 「え?オレ?」 「まーくん以外いないでしょ。結婚しよ」 何言ってんだ? いや、無いだろ。 頭おかしいだろ。 「ごめん、言ってなかったけど結婚してるから」 「知ってるよ。だって、弁当箱とかバッグから見えていたし、それって奥さんが作ってるんでしょ?」 混乱する。 妻がいることに気がついてこんな関係になっているのなら、普通に金だけが目的じゃないのか? 「離婚なんてそんなに簡単にできないよ」 「でも奥さんに不満があるからまーくんはみゆとエッチしたりデートしたりしてるんだよね?そうだよね?」 マズい、本当にもうやめないと。 しかも、こんな風に圧をかけられると違うと言いにくくなったし、二人とも裸でベッドにいる時にうまく話をするのは難しい。 というか、言えないよな。 「ごめん、その・・・」 「みゆの事、可愛い好きって言ってるじゃん」 それは・・・あくまでもピロートークで瞳の方が美人だし愛してるからなんて言えない。 一度、場所を考えて話をした方がいい。 今まで、内緒のメッセージのやり取りとか隠れてホテルに入ったりするのがスリルがあって楽しかったし、こんなオレでも若い子と上手く付き合っていける事が自信にもなった。 だからと言ってみゅーちゃんは違う。 エッチでおバカで都合がいいだけなんて言えない。 「みゅーちゃんは可愛いし好きだけど、離婚はそんな簡単にできるものじゃなくて、少し待っていてくれるかな?みゅーちゃんもまずは卒業をしないとだろ」 「じゃあ来月みゆの誕生日なんだけどお祝いしてくれる?シャンパンとか飲んでみたい」 二十歳のお祝いをして関係を終了させるのもいいかも知れない。 「いいよ」 「じゃあね、みゆ欲しいものがあるんだけど」 そう言ってスマホの画面に表示されたのはクマのイラストがプリントされた財布で軽く3万円オーバーしていた。 「忘れないようにサイトを転送しておくね」 その言葉と同時にオレのスマホがブルッと鳴った。
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