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大丈夫、きっとハッタリだ。
あの手紙から想像しているだけだ。
あの時、焦って口走ってしまった浮気をしてもいいという言葉を鵜呑みにしたわけじゃないよな。
でも、これでお互い様ならオレのことも許してもらうチャンスかも知れない。
そう思うと落ち着いてきたが、瞳が他の男に抱かれたかも知れないと思うとなんとも言えない気持ちになる。
冷静に話をしようと思ったが、シャワーから出てきた瞳にイラつきを覚えてつい強く「どこに行ってたんだ」と言ってしまった。
ところが、瞳はオレの言葉を無視してサイドボードの引き出しに手をかけた。
咄嗟に体が動き瞳の行動を阻止しようと思ったが数秒遅かった。
「ねぇ?なんで60万円が引き出されてるの?」
ボーナスが出たら補填しようと思っていたのに。
何を言っても嘘の言い訳は瞳に暴かれてしまう。
そして絶望的なのは美優にプレゼントしていた事、レストランのことがバレていた。
瞳はキャリーバッグに荷物を詰めていてオレの元から離れていくつもりなのかも知れない。
そんなのは嫌だ。
行かないでくれ
「証拠の写真があるの、とっても凄いやつ」
そのさきの言葉は何も聞こえない
写真?
一体どうなってる?
みゅーちゃんからのメッセージも電話も無視しているから何もわからない。
確認しないと
「いくつなの?」
「#$ち」
声が震えてうまく話せない。
今は答えられることは答えよう
「離婚の話を進めて・・・」
頭の中にキンキンと金属音が鳴り響く
そんなつもりは無かった
「ごめん、もうしない。会わない。離婚したくない。許してください」
行かないでくれ
どんなに懇願してしも瞳は振り返ることなくマンションを出て行った。
どうしよう
電話をしても出てくれない。
とにかく謝罪のメッセを送る。
スマホに振動がくる。
瞳からかと思い画面を見るとみゅーちゃんだった。
もう一切関わりたく無かった。
みゅーちゃんの連絡先を全てブロックしてから瞳に電話をし続けたら電話に出てくれた。
「ごめん、本当にごめん。離婚したくないです」
必死に謝罪をする
『正人からあんなプレゼント貰った事ないし、レストランだって全然連れて行ってもらってない』
いつも頑張ってくれている奥さんにプレゼントとかしてあげたいしね。
チーフの言葉を思い出した。
「ごめん、魔がさしたんだ」
『明日、話しましょう。今日はもう無理だから。それとも美優ちゃんとデートでもある?』
「ありません、もう会いません」
連絡先もブロックしました。だから
『じゃあ、あとで連絡する』
ごめん、ごめん、ごめん、愛してるのは瞳なんだ。
うああああああああああああ
スマホを握りしめて泣き続けた。
後悔をしてもしきれない。
どうかしていた、好きでもない子にプレゼントをして大切な人を蔑ろにしてしまったんだろう。
どこで間違えたんだろう。
何もする気になれず、ぼんやりと何も映っていないテレビ画面を見つめていた。
瞳から
「明日、マンションに10時にいくから」とだけ連絡が来た。
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