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何も喉を通らないし何も考えたくない。
後悔ばかりが押し寄せてくる。
みゅーちゃんと一緒にいて何かいいことはあっただろうか?
今思えば単に貢いでその対価として体の関係を持っていただけ。
みゅーちゃんの体にそこまでの価値はあったんだろうか?
別れたくない
ソファに座っても落ち着かない、むしろ床に転がっている方が気が休まった。
ただそうしているだけでも、窓の外は茜色に変わり青紫から濃藍に変わっていく。
こんな風に日は暮れていくんだ
起き上がって水道の蛇口を捻るとそこから水を飲む。
飲んだり食べたりしてなくても尿意はあるのか、今飲んだ水によって体内が動き出したのかはわからないが急にもようしてきた。
はぁ
最近、用を足すと痒みがある。
ストレスだろうか?
こんなことで病院へ行くのは恥ずかしいし、とりあえず今は瞳に許してもらえるようになんとかしないとけない。
床に座ってソファの肘かけにもたれると、時折うつらうつらと意識を手放すことがあるがそれも長い時間は持たなかった。
まだ暗いにも関わらず、新聞配達のバイクの音が聞こえ、そこからカーテンを閉めてない窓から見える空にはうっすらと白い空気が纏い始めている。
何もしなくても時間は過ぎていく。
この一年、バカなことをして金も信頼もなくしてしまった。
目を瞑ると少し眠ることができるが、頭の中はジンジンと痺れたようで直ぐに覚醒した。
そんなことを繰り返しているうちに、玄関から鍵が開錠される音がして反射的に駆けて行った。
「第三者に立ち会ってもらうから」
話ができるなら希望があるならなんだっていい。
「わかった」
オレは“パパ活”について答えていく。
そう、これはパパ活で学生を援助していただけ。
それなのにみゅーちゃんは勘違いをして結婚したいと言い出したんだ。
あんなにおバカだから就職先が見つからなかったんだろう。
そう、それだ。
「それで?体の関係は?」
「これはあくまでもパパ活だから、その大学生活を応援するために会っていただけなんだ。決して、そんな関係じゃない」
そう答えてみると、本当にただそれだけの関係だったんじゃないかと思えてきた。
が
瞳がオレに見せたのは
ホテルのベッドでみゅーちゃんが撮っていた写真だった。
自分用にと言って撮っていた写真をどうして
まずい
もう誤魔化すこごは出来ない。
正直に話して、誠心誠意謝罪しよう。
それからは二人の関係について正直に話していたが、瞳がやけにお酒について聞いてくる。
酔った勢いだと言えばなんとかなるだろうか?
そんな甘い考えのオレに
離婚一択だとと答えた瞳は
「正人、もうね、どうしようもない状態になってるの」
と冷たい声で言い放たれさらに
「何を言ってもダメだよ」
と強く言われた。
オレがこんなに頭を下げているのに
昨夜だって一睡もできなかったのに
いつだって瞳は正論でオレを論破する。
「そ、そう言う所だよ」
嫌だめだ、ここはおとなしくしないといけないないのに
「瞳はいつだって正しいし、頭もいい、仕事もできてオレなんかよりうんと年収が高い!こんなまんしょんに住んでいられるのも瞳のおかげだってわかってるけど、劣等感に苛まれるんだよ」
こんなこと言いたくないのに
自分の体なのに思考と行動がバラバラになる。
もどかしさに、自分への腹立たしさに、わかってくれない瞳に苛立ち手のひらで床を叩いた。
「美優ちゃんはバカでオレなんかでも優位に立つことができて、気分が良かったんだ」
涙が出る。
何を言っても瞳は冷静にオレの言葉を叩き落としていく。
そして
「裏切られた私がどうして苦しみながら結婚生活を続けないといけないの?もう無理だから」
そう言うと部屋を出て行った。
オレが裏切って瞳を傷つけた
スマホが着信を知らせる。
みゅーちゃんはブロックしているから、もしかして瞳?
袖で顔を拭うとベッタリと鼻水がついた。
あわてて通話の文字をタップすると望んでいた人では無かった。
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