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「何?」
いつも通りに答えたつもりがほとんど声になっていなかった。
『あんたどうしたのその声、風邪?』
「いや、それより何か用?」
掠れながらもなんとか答える。
『たまには二人で顔を出しなさいよ』
そんな場合じゃない、でももしかしたら・・・
瞳と母さんの仲は悪くない、それなら
「喧嘩して」
『喧嘩?原因は何なの?』
「瞳が離婚したいって」
少しの間が開いてから
『離婚?どういこと?』
どうしよう、つい言ってしまったけど原因はオレだし。
浮気してバレたなんて言えない
『ねえ、どうなってるの』
「やっぱいい」そう言って通話を切った。
その後も電話がきたが無視をした。
何度もしつこく電話がきたがブロックするわけにはいかず、スマホが振動するたびにクッションで押さえつけた。
疲れた
明日は仕事に行かないといけないし少しでも眠ろうとベッドにダイブする。
目や頭が痛かったが流石に疲労が溜まっていていたのか朝が来るまでぐっすりと眠っていた。
シャワーを浴びて支度をすると家を出る。
今までは瞳が起こしてくれて、起きると朝食と弁当が出来ていた。
でも今、一人で起きて食べるものもなく、話をする人がいない。
目が覚めたら、全てが夢だったらと思ったが現実はそう甘くない。
仕事をしても頭が痛くて集中力が保てない。
ふとした時に、どう言えば瞳が帰ってきてくれるのかそんなことばかり考えて一日が終わった。
瞳が帰ってこないマンションの部屋、ソファに座ってぼんやりしていると鍵の開く音がして慌てて玄関に向かう。
帰ってきてくれた。
ドアが開くと瞳と義父と義母が入ってきた。
義両親がオレを虫けらを見るような目で見ているのはわかったが、ここでうまくいけば離婚は避けられるかもしれないと三人の前で土下座をして、さらに再構築に向けてGPSをつけてもらう事、預金額も増やすことなどを提案したがその答えが
「正人、私言ったよね?もうそういう段階じゃないって」
と言った後目の前に置かれたのは、セントエルモス学園の学生手帳を写した画像で、そこには小野寺美優と書かれていた。
みゅーちゃん?
高校生?
高校生に金を渡して抱いていた
あああ、だから
瞳がお酒にこだわっていた
オレは
喉がひくついて溜まった唾を飲み込む時ゴクリと音が出た。
「離婚届にサインをしてください。してくれなければこの事実を警察に伝えます。未成年との飲酒と淫行」
うわああああああああ
もう無理だ
オレは止まらない涙を流しながら離婚届にサインをした。
「明日提出してきます・・・」
もう瞳の声が聞こえない。
うああああああ
あああああ
声を出して泣いた。
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