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<再スタート>
披露宴はしていないにしても結婚する時はお互いの両親との顔合わせや新居の準備、諸々の手続きなどなかなか大変だったがこれからの希望と愛情で忙しいこともまた楽しいと思えた。
が
離婚となると精神的苦痛に加えて同じように諸々の手続きが結婚の時と同じように、いやむしろ多い。
奥山瞳に戻って一旦実家に身を寄せながら会社の近くに部屋を借りるつもりでいる。
だから
「家具は全て必要ないから」
「オレも実家に帰るから」
「だったら引っ越し業者に買取及び処分してもらえばいい」
「でも、何か必要なものがあれば持っていってくれて構わないけど」
「あなたと使ったものは何もいらない」
話をしながらも私物を段ボールに入れていく、もう必要のない物もここに置いていく気になれずゴミになると思っても全て梱包していった。
「本当にごめん」
「もうその話は済んでいるから、二人で預金していたものの清算はあなたが使い込んだ分を差し引いて振り込んでおくから、慰謝料の振り込みは別にお願いします」
「うん、振り込んでおく」
引っ越し業者には単身パックとして申し込んでいてもうすぐ来そうだから、急がないといけないのに、荷造りする私の後ろでずっと謝罪の言葉やもう意味の無いことを言っている。
正人の不倫を知った時は、やっぱり悲しかったし苦しかっただけど、相手を知るうちに怒りと嫌悪感しか無くなって、今はどうしてこの人と結婚したのか、どこが良かったのか、この人を好きだったのかさえわからなくなってしまった。
この先、恋愛とかできるのかな?
まだ28才なのに。
ジュエリーケースはダンボールではなく、手提げに入れてからふと取り出して中を開ける。
そこにはプラチナの結婚指輪が納まっていた。
どうしよう、返すのもおかしいし
「はぁ」
ため息をついた時、背後で「あっ」という声が聞こえた。
正人も指輪に気がついたのかもしれない。
まぁ苦い思い出として取っておくか、売ってなにか美味しい物でも食べよう。
ケースをバッグに無造作に入れると荷造りを再開したところで引っ越し業者が来て荷物を手際よく運び出した。
「何か私のものが残っていても連絡とかいらないから捨てちゃって、じゃあ」
最後くらい向き合おうと思って正人を見ると顔中ドロドロになるほど涙と鼻水が出ていた。
「ご め ん」
そんなになるなるなら、なんで不倫なんてしたのよ。しかも、あんな地雷JK。
離婚届を出した日に鍵は受け取り人払いで宅配便で送っていたからそのまま部屋を出た。
門をでてマンションを振り返る。
正人は実家に住んでいて私はあの頃は都内のワンルームだった。二人で住む部屋を探してある程度の広さを求めて都内からは橋を渡ることにして決めた部屋。
「前を向こう」
自分自身に言い聞かせて駅に向かった。
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