凌太side<出会い>

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父は忙しいのかあまり会うことが無かったが、たまに会っても顔には疲労のあとがはっきりしている。 「あまり無理するなよ。何か俺で出来ることがあったら言って欲しい」 そう言うと父はふっと優しい笑顔になった。 「心配かけてすまない。お前は何があってもわたしの大切な息子でこの家の跡取りだ。それだけは忘れないで欲しい」 父の背中を見送りながら、不安を感じたが漠然として何が不安なのかはわからなかった。 タブレットを起動して今までアナログでとっていたノートをアプリに入れていく。 ふとしたことで瞳と呼ばれていた人のことを思い出した。 まったく俺に興味を示さなかった人。 明日も会えるだろうか、もし会えたら連絡先を聞いてみよう。 そんなことを考えているとラインが入る。 Mao って誰だっけ? →[今夜時間ある?] やり取りを確認する。 ああ、渋谷さんか [じゃあ渋谷で]← [何時?]← 渋谷というのは本名じゃない、と思う。 単に以前、先輩に強引に連れて行かれた居酒屋で隣の席で飲んでいた3人組の女性の一人だった。 もちろん、俺は酒は飲んでいない。 高校の頃、酒を飲んで停学になった奴がいたがどうせいつかは20歳になるんだし、わざわざ法を犯してまで飲むようなものでもないだから、あの日も酒を飲んでいる先輩達の前でずっと烏龍茶を飲んでいた。 渋谷さんは友人同士で来ていていつのまにか一緒に飲み始めてさらに気がつくとしっかりカップルが出来上がっていた。渋谷さんはそこそこ酔っていてタクシーを拾おうと思っていたがそのままホテルに入った。 26歳で看護師だという渋谷さんは「医者をゲットして玉の輿に乗るから彼はいらないけど性欲はあるのよ」と言って関係を持ってから、その後二度ほど渋谷のホテルで会った。 →[もう仕事は終わったからいつでも] 渋谷で会ってヤるだけだから渋谷さんと認識しているだけで本名はよくわからない。 [1時間後くらい]← →[OK] 円山町のカフェに行くと渋谷さんもといマオがスマホを弄りながら待っていた。 仕事柄爪はいつも綺麗に切り揃えてあり安心できる。 マオは俺の姿を見つけるとすぐに立ち上がりこちらに向かってきた。することは決まっているから、カフェで話をするこなく目的の場所へ向った。 「リョウ久しぶりだよね」 「まだ医者は落とせてないの」 「そんな簡単にいかないって」 マオにも俺をリョウということしか伝えていないし、マオも特に俺に何かを聞くこともないから気楽な相手だ。 高校時代は流石にホテルとか使って誰かに見られると面倒だから、母の隣の部屋をヤリ部屋にしていたが、大学に入学してからはむしろ家ではなくホテルかセフレの部屋を使っている。 大学に入ってからは家に誰かを呼ぶことは無かった。 「疲れた〜」 と言いながらマオは部屋に入るとバッグをテーブルに置くと服をさっさと脱いでバスルームに向かった。 俺も服を脱ぐと後に続いた。
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