<責任>

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<責任>

凌太を送って帰ってくると知らない番号からの着信があった。 留守電サービスにも伝言は入っていない。 間違い電話か、何かしらの勧誘か本当に用事があるのならまたかけてくるだろう。 と、思いながら画面を見つめていると同じ番号からまたかかってきた。 誰だかわからないから「はい」とだけ答える。 『おい、お前の旦那どうなってんだよ。電話もでねえし、マンションに行っても出てこねえ。ふざけてんのか!』 あまりのボリュームにあわてて耳元から離す。 『聞こえてんのか、未成年とヤりまくったくせに都合が悪くなるとトンズラしやがって、どうなってんだよ。旦那だせや』 何この人 「どちら様でしょうか?」 『はぁ?スカしたこと言いやがって、お前の旦那がおもちゃにしていた小野寺美優の父親だ』 「おもちゃって、娘さんが竹内と金銭のやりとりで関係をもっていたんですよね、そのことで私は離婚が成立してますから竹内を私の旦那という呼び方はしないでください」 『ごちゃごちゃ、うるせえんだよ』 〈ちょっとあんた、やめて〉 父親と名乗る人物の近くに他の人間がいるようだ。 「ご用件を」 〈なにやってんだ、離せ〉 『すいません竹内さん』 この声には聞き覚えがある。 「慰謝料の支払い、きちんとしていただいてありがとうございました。それから離婚が成立しているので奥山になります」 一瞬、間があいてから『すいません、奥山さん』と返事があった。 今更なんの用だろう。連絡を取り合うような仲ではないので簡素に「用件は?」とだけ答える。 『迷惑だと思ったんですが、竹内さんに連絡がつかなくて。電話をしても拒否されているようだし、マンションへ行ってもいつも留守で』 正人も実家に帰ると言っていたから、もう退去している可能性がある。 『連絡をとってもらうことは出来ませんか?竹内さんが逃げてしまったことで主人がキレて』 正直、もうこの人たちとも関わりたくないが 「連絡をするように伝えることは出来ますが、そこまでです。竹内が連絡をするかは確約できません」 『ありがとうございます。その時に伝えていただきたいことがあるんですが、それと奥山さんにも聞きたいことがあったんです』 「なんですか」 『奥山さんは体調はどうですか?』
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