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また朝がくる。
ハッシュドポテトにスクランブルエッグ、レタスをちぎりながらこの不誠実な男に食事を作ることに意味があるんだろうかと思ったら手が止まってしまった。
自分が食べるための“ついで”だ。
そう自分に言い聞かせていつものワンプレートとトーストを1枚だけ焼いてコーヒーをドリップした。
洗濯はしない。
別に明日でいい。
お弁当も作りたくない。
焼き上がったトーストにバターを塗ってカップにコーヒーを注いで一口流し込む。
飲み込んだコーヒーは味がしない。
トーストも味を感じない。
自分が思っているよりもダメージを受けている。
じわじわと痛みが体を侵食していくようだ。
化粧をして、いつもよりおしゃれをして正人を起こしに行く。
「正人、朝」
んんんと小さく唸りながら目を覚ました正人は急にガバッと起き上がると「昨日さ、感じ悪くない」と、不機嫌そうに言ったあと、私の姿に違和感を感じたようだ。
「何が?今日は飲み会があるから。正人は好きにしていて」
そ言うと真っ直ぐ玄関に向かい靴を履いていると正人が慌てて追いかけてきた。
「瞳、もう一度ちゃんと話をしよう」
私は黙って玄関を出た。
話って、どうせ嘘なら聞く耳はない。
電車に乗ってからインスタを起動させると美優からメッセージが来ていた。
そこには、自撮り特有の俯瞰で正人と美優が上を向いて抱き合っている写真で完璧に下半身まで裸だと分かるものだ。
スクリーンショットを撮る。
もう一枚は正人が真っ裸で寝ているところに美優が顔だけ入れて自撮りしているものだった。
それもスクリーンショットを撮った。
本当にドッキリだわ。
ラインを立ち上げると里子にさっき撮ったスクリーンショットの画像を送った。
里子【うっわーサイテー】【やってんじゃん】
【やってました】
里子【てか、美優ってバカなの?】
【多分、これって慰謝料請求の証拠になるのにね】
里子【どうすんの?】
【離婚かな、その前に美優の正体を突き止めないと、一度直接会うしかないよね】
里子【インスタにはなんて返事したの】
【スルーしてる。下手に返事するより放置プレイ】
里子【そっか】
【じゃあ、夜ね】
楽しみと書かれたスタンプが送られてきた。
ラインには正人から【ごめん、ちゃんと話そう】というメッセージが入っていたが既読スルーにした。
沈黙が1番、猜疑心、恐怖心を煽るから。
昼休みにマンションの管理会社へ連絡したが、防犯カメラは管理会社が勝手に確認できないから先ずは警察に連絡して欲しいとのことで、警察からの依頼がなければ確認は無理だと言われたが、張り紙はしてくれると言うことだった。
張り紙でも少しは、美優にも正人にもプレッシャーになるかもしれないと思いお願いすることにした。
念のためにインスタを確認すると美優からは【無視すんなオバハン】【返事しろよ】とまあまあ失礼なメッセージがきたが、やっぱりかなり若い気がする。JKだという線は濃いかもしれない。
だから、泊まりとか無かったのか。
不快なものを見たくなかったが、今は集められるだけの証拠を探すために美優の記事を見ると、今日は誕生日とハピバのタグがついた写真は男性とのレストランでの食事の写真で男性はギリギリ写真に収まらないようにになっているが、夜景が見えるガラス窓に正人とわかる人影が映り込んでいた。
ナニコレ
ハイブランドのバックや財布をプレゼントして高級そうなレストランで食事、随分と羽振りがいい。
もしかして、二人で貯めている預金を使い込んでる?
確認してみないと。
この写真も保存をして、朝の分と合わせてパソコンのメールに送信した。
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