<手紙>

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<手紙>

「正人起きて」 まだ、ベッドの上で掛け布団を抱きしめている正人の肩を揺する。 「おはよう瞳」 「ご飯の用意が出来てるから早く支度して」 私は竹内瞳、28歳で食品メーカーアカツキ食品の商品開発部で働いている。 そして、抱きしめていた布団を手放してゆっくりと動き出したのは結婚して3年になる夫の正人30歳だ。彼はスーパーに勤めていて商品のリサーチの時に担当してくれたことがきっかけで付き合い始め、半年でゴールインした。 目玉焼きとソーセージ、サラダをワンプレートにしてバターロールとコーヒー、大体そんな感じの朝食を二人で食べる。 収入のことを考えて子供はまだ未定だが、女性にはリミットがあるからそろそろ考えたいと思っている。 正人はお店では制服のジャンパーを着る為、出勤の時もスラックスにワイシャツとネクタイだけで、季節によってコートやジャケットを羽織る感じだ。 イケメンでは無いけど、真面目で優しい。少しぽっちゃり気味だけどそれも可愛いとも言える。 「オレ、今日は早番だけどやる事があって遅くなるから夕食は要らないよ」 「分かった、じゃあ適当に食べてきちゃうね」 共働きだから結構こんな感じで夕食なども作ったり作らなかったりだけど正人は何も言わない、すごくデキた旦那様だと思う。年収は私の方が多く、子供ができた時に休職するか一時的に仕事を辞めた時のことを考えて二人でコツコツと貯蓄をしているためお昼は二人とも私のお手製の弁当だ。 正人はお弁当を手に取ると「じゃあ行ってくる」と言って玄関に向かい、私はキッチンから 「行ってらっしゃーい」と声をかけて送り出した後、食器を軽く水で流すと食洗機に入れてスイッチを押し、洗濯機から洗濯物を取り出すとサクッと干して除湿器のタイマーを入れると、スピードメイクをして家を出る。 ちなみに私はイケメンが嫌い。 ハイスペすぎる奴も嫌い。 学生時代に付き合っていた人は顔よし、スタイルよし、頭脳よし、そして御曹司だった。 だけど・・・ 嫌なことを思い出してしまった。 マンションのエントランスにある集合ポストの中を覗くと、何かが入っていた。新聞は電子版を読んでいるため、集合ポストは夜に帰宅した時か、こんな風に出勤前に回収する。 入っていたのは切手の貼っていない封筒だった。
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