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誰か、僕の理想郷を壊して。
そうだ。二人の隙間にも、夏風は通り過ぎて行く。
寝息を立てて寝る少女。
扇風機から発せられる無機質な空気と交信した彼女。
思うに、『君』が一番輝いて見えるのは、
周密とした優しさで、
合間に魅せる笑顔で、
沁みるように眠る姿だ。
その最後の姿が、今僕の前で繰り広げられている。
『もうすぐ花火大会が始まるぞ』
すやすやと眠る彼女に、訊いたが、何も返ってこない。何処か、僕の声が小さかったからかもしれない。
そんな折、何故だか儚さが、戻れない中に生きていることを心に刻んでくれた。
紛れもなく寂しくて、意味を紛れも無い『君』に問った。
返事もまた、二人の間を過ぎる夏風に、攫われてしまったのかもしれない。
─────帰路に、手を繋いでいたのに。
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