07 結果発表!

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07 結果発表!

 女神様はみんなの紙を回収し一人で『お~』『へ~』と楽しんでいる。 「おまたせしました。今回選ばれたのは~」  どこからか小太鼓の音がする。ドドドドドドドド、ドン! 「エリザベートさんで~す! 皆さん拍手~!」  女神様はこれでもかと言う拍手でエリザベート様を讃える。  みんなもつられてパチパチと拍手する。  ガタン! 「なぜだ! なぜ私じゃない! あれ程戻りたいと言ったじゃない! 皆はわかっていなかったの? 何を聞いていたのよ」  怒り心頭のフェリシモ様が机を両手で叩き女神様に喰らいつく。 「あら? 投票結果なんだからしょうがないじゃない? 始めからそう言うルールだったわよ」 『ん?』と首を傾げて、女神様は全く相手にしていない。  …  私達は無言で成り行きを見守る。だって、私、横の席だしね。フェリシモ様がかなり怒っているのがビンビン伝わって来るし。怖いんだよ。 「あんなに『戻りたい』と言ったのに! 女神! この三人はイレギュラーだと言っていたではないか! そこのおばさんも悪女だけど最後は戻りたいとも言っていない! 今回は希望するものが戻るべきではないの? ねぇ!」  と、フェリシモ様は私の方へ向き、同調するよう強要して来た。目力が!!!  え! 困るんだけど… 私はタジタジしながら女神様を横目で見て助けを求めた。 「どうなのよ! あなた、まさか私じゃない人に投票したんじゃないでしょうね?」  と、フェリシモ様は迫って来た挙句、いきなり胸ぐらを掴んで来た。  怖いよ~。女神様~。助けて! 「止めなさい、フェリシモ。最後の忠告よ」  女神様は真顔でフェリシモ様を牽制する。 「はん。今まで大人しくしていたが、こんな小娘達。私の魔法の前では小虫も同然」  と、いきなり私を突き放すとエリザベート様に向かって手を向けた。 「は~、フェリシモ。残念だわ」  女神様はため息をつきつつも、素早くパチンと指を鳴らす。あっという間にフェリシモ様は居なくなってしまった。  そう、跡形もなく一瞬で目の前から消えた。 「ほぉ~。女神の御技か。それが魔法と言うものかぇ?」  蘭令様はフェリシモ様より魔法が気になるようだ。 「違うわ。ん~? 魔法と言えば魔法に見えない事もないか… あのね、私の力? によってこの空間は保たれているの。だから私の思った通りに何でも出来るのよ」  ほぇ~。万能! あっそっか。神様だった。女神様だもんね。軽いノリだからちょっと忘れかけていたな。いけない、いけない。 「面白うのぉ。他は何ぞないのかぇ?」 「後でね… それより今はエリザベートさんよ。エリザベートさん! 改めましておめでとう。あなたを戻す事にしました。これは拒否権はないわ。ごめんなさいね」 『ハッ』としたエリザベート様が我に帰る。 「あっ私… えっと、わかりました。皆様、ありがとうございます」 「それでは、物語が現実となった世界へ送り出すんだけど、あなたはどの時点に戻りたい?」  エリザベート様は真剣に悩んでいる。 「少し時間を頂けますか?」 「ええ、いいわよ。では、他の方々は輪廻の輪に還ってもらいます。輪廻ってわかるかしら?」 「妾は理解している。人は生を受け、また死んでいく。魂が浄化されまた生を受ける。繰り返すのじゃ、一つの魂が色々な者に生を受けては死に、生を受けては死ぬ。記憶は蓄積されないがな。その繰り返される輪に戻れと言うのじゃな?」 「ええ。次の人生は幸せになってね。どうなるかは私もわからないけど。心からそう願うわ。では、エリザベートさん以外のあなた達はいいかしら?」  と、女神様が片手を挙げて指を鳴らそうとした。 「待て待て! 女神よ、最後に妾の希望を聞いてはくれぬか?」 「ん? あなたも戻りたいとか言わないでよ」  と、女神様はちょっと機嫌が悪くなった。 「いや違う。妾はこのままここに居たいのじゃ」  ん? 「蘭令殿。あっ、あなたは輪廻とやらに行かないのか?」  ずっと黙っていたデアトロ様が流石に不思議に思ったのか、珍しく蘭令様にツッコンでいる。 「いずれは戻るじゃろうが、妾は女神の側でこの他の選手権が聞きたいのじゃ。生まれ変わるよりよっぽど面白い。色々な世界の悪女達の話じゃぞ? ワクワクする〜そうは思わんか?」  …  私とデアトロ様は顔を見合わして呆れている。 「あなた… は~、まぁいいわ。ちょうど助手が欲しかったし。一人で物語を読むのってしんどいのよね。いいわよ、しばらくの間私の従者になる? 皇后の地位に居たあなたが私の言う事を大人しく聞けるかしら?」 「あぁ。善処する」  蘭令様は余程うれしいのか、ニタリ顔ではない初めて美しい笑顔を向けた。  キレイな人。 「あなた達は輪廻へ還るわね?」 「あぁ。エリザベート殿。がんばってくれ」 「はい。エリザベート様、次はお幸せになるといいですね」  私達は女神様の『パチン』でその場から消えた。  私は夜空に浮かぶ天の川の星達の様な、魂達がゆっくりと流れる川の中へと吸い込まれる様に落ちて行った。  あ~温かい。  <エリザベート目線> 「女神様、決めました!」  私は二人を見送ると女神様にお願いする。 「ええ。どうぞ」  ニコニコ顔の女神様。 「では、王子と婚約する三年前に戻して下さい。九歳です」 「理由を聞いても?」 「はい。王子と婚約せず隣国へ留学しようと思います。その根回しに三年要ります。後は学校が始まるまでの三年で確実なものにします!」 「ほぉ、根回しとな。どうするのじゃ?」 「ええ。まず、王子を婿にもらうと言う選択肢自体を潰そうと思いまして。私自身が騎士になればいいのではないかと考えました。それで、女性騎士が存在するのは隣国のみです。ですので隣国へ留学し私自身が強くなって婿を連れて帰って来ます。万一、二〇歳までに婿を見つけられなければ相続権を放棄する、と父に進言します」 「それに三年もいるのか? 親を説得すればいいのではないか?」 「はい。でも父は実力主義ですので。騎士になるにしても下地が必要なんです。九歳に戻って領の騎士に稽古をつけてもらわないと! あと、隣国の言葉ももっと勉強しなければいけませんし。何より私は、どうせやり直すのなら、今度こそは人生を全うしたいのです。自国の学校へ行ってしまっては、転生者のミカエル様に会ってしまう… 絶対にがんばってみせます! 命がかかっていますから!」 「そう。私の予想と違ったわ。また全く違うアプローチね。いいわ、あなたの希望を叶えましょう」  女神様はニコッとして片手を挙げる。 「女神様、ありがとうございました。蘭令様もお元気で」  私は目を瞑って女神様の『パチン』を待つ。 「パチン」  恐る恐る目を開けると私はベットに寝ていた。寝たまま両手を挙げて見る。 「あっ!!!」  手が小さくなっている。そうだ! 鏡!  バッと布団を剥ぎ鏡の前に急ぐ。走っている間も足が小さいのがわかる! うれしい! 鏡で見なくてもわかるんだけど、見てみたい! 確認したい! 「やった~! 戻った! 最初は戻りたくなかったけど… 九歳に戻った! やった~!」  私がその場ではしゃぎすぎたので、部屋に入って来た侍女に怒られた。 「お嬢様! はしたないですよ! 朝早くから大きなお声はいけません」  あっ! 私付きの侍女、ハンナだ。若い! ハンナも戻っている! 「ハンナ~!」  と、私は抱きついて泣いてしまった。 「あらあら、どうしたのでしょう。いつもはお嬢様は大人しい方なのに… 熱でもあるのかしら?」  と、ハンナはブツブツ言いながらおでこを触ったり脈を診たりしている。 「ハンナ! 私、決めたの! 私、女性騎士になるわ!」 『はっ?』と、目が点になったハンナを余所に私はベットの上によじ登り、片手を天に向かって突き上げる!  今度はお婆ちゃんになるまで生き抜いてみせる! 絶対に幸せになってやる!
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