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目当ての教会は、隣町といえども歩くには少し遠かった。最寄りのバス停を覗いてみると、小さく掲示された時刻表には20分毎の運行と書かれていた。そして運良く、次のバスが近づいてくるのが見えた。
「路線バスの旅か。なんかいいね」
どちらからともなく、そう言いながらバスに乗り込む。ガラガラに空いた車内。そのほぼ真ん中付近のシートにドカリと座る。
絶え間なく流れ行く日常。その平凡な移り変わりに、少しだけ変化を付けてみる。するとこんなにも、見えている景色が新鮮に感じる。バスに揺られながら、そんなことを考えていた。
十五分ほど時間が経過しただろうか。バスが最寄りの停留所「教会下」に到着する。旅というには、あまりにも近すぎた。
「教会って、なんかクリスマスっぽくっていいよね」
そんな薄っぺらな会話をしながら、私たちは丘の上の教会を目指し歩いていた。
「うん。クリスマスといえばやっぱ教会だよ。ケーキとかチキン食べて盛り上がるのもいいけど」
教会には縁が無かった者の、正直なつぶやきだった。
「だよね。主役が教会で待っているのに、行かないのは失礼だよ」
「神の祝福もクソもない〜って」
「クソって……やだ」
「あはは……」
そんな会話と冬の淡い陽射しが、私たちをなんとも幸せな気分にしてくれていた。
「あ、晴れてるのに雪が舞ってきた」
「本当だ。寒いはずだね」
突然、舞い降りてきた風花。思わず私は、しんみり呟いてしまった。
「雪か…… 私ね、よく雪の夢を見るの」
「え!雪? どんな?」
彼が興味深そうに訊いてくる。
「あのね……テストの解答用紙が真っ白のままなの。私が焦っていると解答用紙が突然、クリスマス・カードになっていて、そしていきなり雪が降ってきて……それで終わり」
「なんか…… 病んでるかも」
「うん……」
そんな他愛もない会話をしているうちに、私たちは教会に到着していた。
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