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「今日は何の特別な日だかわかる?」
セミロングの髪を揺らしながら手を後ろに組むと、大きな瞳でミユキは僕の顔をのぞき込んだ。
「えっと……何だろう? ミユキの誕生日でもないし……? 何?」
僕が不思議そうに問うとミユキはちょっとすねたように頬を膨らませる。
「もーう! ユウくんが私と出会って一年と一カ月と十一日だよ! 一並びの記念日なんだから!」
「悪い悪い。ミユキは本当に記念日を祝うのが好きだよね」
「だってそうすると、ユウくんとの絆が深まる気がして……。嫌?」
「そんなことないよ。教えてくれてありがとう」
ミユキはパッと笑顔になった。
「ユウくんのそういうところ好き!」
ミユキは僕の二つ年下で二十四歳。食品メーカーでOLをしている。美人で気立ても良くて僕にはもったいないくらいの彼女だ。ちょっと天然なところも可愛い。ただ、気になる点を一つだけ挙げるとすれば、このやたらと記念日を祝いたがるところだった。でも、彼女曰く、「ユウくんとの日々を一緒に胸に刻みたい」ということだから、彼氏としては贅沢な悩みだと思う。
それに味気ない平凡な日を特別な日にしてくれることに文句がある人間がどこにいるだろう?
そう微笑んで過ごしていた僕だったが、ある日、その認識を改めた方が良いかもしれないと思う出来事が起きた。
「ねえ、ユウくん。今日は何の特別な日だかわかる?」
いつものようにミユキがニコニコしながら僕に問いかけて来た。
「ええっと……何だろう?」
「ダメだなぁ、ユウくん。ユウくんは忘れちゃいけない日だよ?」
「どういう意味?」
「ユウくんのご両親の結婚記念日だよ! おめでとう!」
僕は驚いた。両親の結婚記念日なんて僕も知らない。そんな格式ばった家じゃないし、両親が結婚記念日を祝っている様子も見たことがない。少し考えて苦笑した。
「ミユキ、そんな嘘をついてまで今日を特別な日にしたいの?」
するとミユキは不思議そうな表情を浮かべる。
「嘘なんてついてないよ?」
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