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ミユキと別れた後、僕は久々に父親に電話した。
「もしかして今日、父さんと母さんの結婚記念日?」
「え……? ちょっと待ってくれ。母さんに聞いてみる」
一度スマホを置いて戻って来た父親は驚いたような声を出す。
「お前、よく覚えてたな! 俺も忘れてたぞ! 母さんに花でも買ってやらなきゃな」
僕は愕然としてスマホを切った。
……一体なぜ、ミユキは知っていたんだろうか?
次のデートのとき、喫茶店で僕はミユキに尋ねた。
「ミユキ、この前の結婚記念日だけど、どうして……」
するとミユキは僕の言葉の終わりを待たずに口を開いた。
「それはもう良いから、今日の話をしよ!」
「今日の話?」
「そう! ねえ、ユウくん。今日は何の特別な日かわかる?」
「え……!? わからないけど……?」
するとミユキはニコニコしながら口を開いた。
「ユウくんの妹の彼氏の誕生日だよ! おめでとう!」
「ま、まさかぁ!」
僕は若干恐怖を覚えた。一人暮らしをしている僕は、大学生の妹の彼氏が誰なのかさえ知らないのだ。
ミユキは不思議そうに僕を見つめた。
「ホントだよ?」
僕はミユキがトイレに行った隙に、SNSで妹にメッセージを送って確認した。
「何、急に? そうだけど? お母さんから聞いたの?」
僕はゾッとした。その日のデートはミユキが何を言っても頭に入って来なかった。
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