夢、うつつ。

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いつ頃からか、不思議な夢を見るようになった。 果てしなく広がる濃紺の闇の中、知らない男と二人きり。 灯りはないはずなのに、何故か自分と彼の周りだけは月の光に照らされているかのように明るい。 だから相手の容姿や、表情はしっかりと確認することが出来た。 色素の薄い艷やかな白い肌、ゆるやかにウェーブのかかったベージュに近い淡色のふわふわとした髪。 そして、宝石のように煌めく溢れ落ちてしまいそうな程に大きな瞳。 背はそんなに高くないが、それがまたよく似合っていた。 こんなにも美しい存在を、俺は今まで一度も見たことがなかった。 仕事柄モデルや俳優に会うこともあるが、彼らだって到底敵いはしないだろう。 あまりに人間離れしたその姿に、初めて見た時は恐怖さえ感じた。 「···誰?」 ぼんやりと佇んでいた彼とふと目が合ってしまい、恐る恐る最初に投げ掛けた問いに返事はなく、曖昧な反応を見せるだけで口を開きはしない。 聞こえてはいるみたいだが、言葉を交わすことは出来ないようだった。 「会ったことない···よな?」 それでも聞こえているならと一方的に話を続けてみれば、彼は少し緊張した面持ちで一つ頷いて、ぺこりと行儀よく頭を下げた。 初めまして、と言いたいのだろうか。 同じように俺もお辞儀をして返すと、嬉しそうに強張った頬を緩めて笑うから、つい釣られて自分も笑っていた。 警戒心は人一倍強い方で、こんな得体の知れないような奴、普段なら絶対に相手にしない。 心を開くなんて、以ての外だ。 そのはずなのに、何故か彼のことを知りたい気持ちになってくる。 何かが可笑しいと感じながらも、どうせ夢の中なのだから難しく考えなくても良いか、と普通に受け入れてしまった。 この時の違和感を無視したりしなければ、きっと未来は変わっていただろう。
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